自由学園には、那須農場(栃木県)をはじめ飯能・名栗フィールド(名栗植林地・新名栗フィールド(埼玉県)や海山植林地(三重県)などのキャンパス・フィールドがあります。しかし、2019年12月からのコロナウイルス感染拡大状況により、以前のような生徒・学生の活動が行えなくなりました。これに対し、最高学部では2022年から新たに学部1、2年生対象の飯能・名栗フィールド活動を開始しました。1年生は、まず「フィールドを知ること」を目的にかつての男子部高等科生が植林を行ってきた正丸峠付近の植林地と、上名栗にある名栗すこやか村の古民家を訪れ、2年生はその経験の上に名栗地域の産業や自然を学ぶプログラムとなっています。当初は教員が活動内容を考えていましたが、次第にこれらの経験を通して後期課程での研究活動を展開する学生も現れ、彼らの研究成果の一端を活かしながら、内容もブラッシュアップしてきました。昨年の宮代雅章さん(2024年度卒業)に引き続き、今年度も丸原歩さん(4年生)が事前レクチャーを行い、当日もTAとして参加し現地での解説・ワークショップを担当しました。




4月27日(日)、気持ちのよい快晴の中、8時30分に西武秩父線正丸駅に集合した20人の学生は、約1時間かけ正丸峠に上りました。そこで、正丸峠の歴史についての簡単な解説および林内での安全に関する諸注意を聞いたあと、ヘルメットや熊避け鈴などの装備を整えました。今年は、男子部生が植林を始めてちょうど75年目にあたり、70年生超となったスギやヒノキの間を縫って整備されたおよそ900mの作業道を歩きながら、地質や植物、林内に設置された気象観測機器などについて、丸原さんや環境文化創造センターの吉川先生の解説を聞きました。



作業道を歩いたあとは、途中の「2窪」(窪:沢のこと)にあったスギの風倒木をノコギリで2mほどに玉切りした後、枝を払ってからリフティングトングを使ったり、担いだりして男子部生が作業の拠点としていた作業小屋まで運び下しました。作業小屋には予め実際に使用していた草刈鎌、ノコギリ、トウグワなどの植林・育林道具や、食器などの生活道具と共に、活動の様子を撮影した写真などを展示して見てもらえるようにしました。また、実際に運んできた丸太をノコギリで切る体験や、枝打ちに使っていた一本梯子に上ってみる体験なども行いました。昨年までは、林内での解説や簡単なクイズなどを行って来ましたが、ワークショップを加えたことでより充実した活動になったと思います。



その後、正丸峠の奥村茶屋にて用意していただいたお弁当を持って、上名栗の古民家へ移動しました。ここは男子部19回生の柏木正之さん(元名栗村村長、大松閣代表取締役会長)が代表を務める(一社)名栗すこやか村が管理するもので、古民家の背後の山が新名栗フィールドの1ノ山となっておりコロナ禍の前までは、最高学部男子学生が育林労働を行っていました。
お弁当をいただいた後、柏木さんからご自身の学園での学び、名栗地域に戻ってからのご苦労や村政・市政に参加した際のお話、地域の現状と課題などについてのお話を伺い、15時半ごろ解散し路線バスを利用してそれぞれ帰路に着きました。



参加した学生からは、
「サワラとヒノキ、スギの違いを勉強したり、名栗にある植物を見られて良かった」、「昔と今の気象観測データのとり方の違いなどについて現地で話が聞けたので、比較しながら見学できた」、「植林の道具を実際に見たり、一本梯子にのぼることもできた」、「名栗植林地の材がどのように使われたかということを知ることができた」「柏木さんのお話しが興味深かった、学園について更に知ることができた」などの感想が聞かれたほか、多くの学生がこの活動を楽しかった、と言っていました。今後、組の時間を使って活動の振り返りを行う予定です。
このような学園のフィールドを使った活動の経験と学部の様々な講義が連関性をもち、学部の実習や研究が更に発展していくことが期待されます。

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文:小田 幸子(環境文化創造センター次長・最高学部教員)・写真:吉川 慎平(環境文化創造センター長・最高学部教員)・丸原 歩(最高学部4年)