「自由学園の森(海山植林地)」の記念調印式に学生代表として出席/学生生活・学外活動 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

「自由学園の森(海山植林地)」の記念調印式に学生代表として出席/学生生活・学外活動 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学生生活・学外活動

「自由学園の森(海山植林地)」の記念調印式に学生代表として出席

2021年12月11日

11月30日午前10時より,紀北町役場に於いて,関係者列席のもと「紀北町と学校法人自由学園の連携による森林整備等に関する協定書」締結を記念した調印式を挙行しました.半世紀に渡る海山植林地の分収育林契約期間の満了に伴い,今後の更なる発展を見据えた新協定締結による存続が決定し,紀北町・尾上寿一町長,自由学園・高橋和也学園長,立会人として長年に渡り海山での植林活動にご尽力いただいている速水林業代表の速水亨様の3者による記念調印が行われました.

協定締結に関する速報記事はこちら

学園からは環境文化創造センターの担当者ほか,学生代表として最高学部4年の鈴木祐太郎さん,3年の服部昂さんが出席しました.

調印式の席上,鈴木さんからは海山植林地での気象観測の再開と,海山地域での水環境の調査に着手したことについて,服部さんからは,尾鷲ヒノキと海山地域をイメージしたロゴマークのデザインをはじめ記念調印書の製作についてそれぞれ報告しました.記念調印書はFSC認証紙を使用て印刷し,フレームは海山植林地のヒノキと,南沢で伐ったヤマザクラを使用したものを学園で準備しました.

以下,今回はじめて海山地域を訪問した2人に,活動報告と海山地域の今後の活動の可能性について,それぞれまとめてもらいました.

 

調印式で報告する鈴木さん

 

調印式で報告する服部さん

 

「自然豊かな海山地域の魅力」 4年(ギャップイヤー取得中) 鈴木 祐太郎

私は初めて海山を訪問しました.自由学園の海山植林地の第一印象は,斜面がとても急勾配であり,植林も育林もとても苦労しただろうなと思いました.植林地に水位計や雨量計,温湿度計を設置することと銚子川をはじめとする周辺河川の水質調査をしました.

今回は,学生の拠点だった通称「海山小屋」付近に雨量計,温湿度計,小屋の前の沢に水位計,EC(電気伝導率)計を設置しました.目的は,日本の中でもトップクラスの多雨地域にある海山植林地の傾向を把握し,南沢キャンパスと比較したいと思いました.獲得できたデータは,自主活動である「水文・気象観測室」として,整理し,学生・生徒の研究や学習に役立てたいと考えています.

また,私は卒業研究として自由学園周辺の地下水や湧水,河川の調査を行っており,海山植林地周辺の船津川や銚子川,それぞれの支川などで水質調査をしました.調査をして,学園や学園周辺の河川と値が大きく違うことから,なぜこのような違いが出るのかを今後の研究課題の一つにできればと思いました.私は水や気象観測をテーマにしていますが,地域の文化,産業などの面でも海山の特徴と自分の住む地域などを見比べると面白い発見があると思います.

今後,多くの学生が関心を持って,海山植林地と周辺地域をフィールドとして学ぶことができるように,私は気象観測や卒業研究を通して,海山で活動に取り組んでいきたいと考えています.少なくとも自由学園の学生のうちに一度は,海山に行くべきだと私は思いました.

 

植林地内の渓流水の調査を始めた鈴木さん

 

最高学部から移設した雨量計を調整

 
 

「記念調印書制作から学ぶ歴史と責任」 3年 服部 昂

私は本協定の記念調印書を制作いたしました.これまでの紀北町と自由学園,そしてこれからも両者をつなげてゆくこの調印書では,誇るべき海山の美しく豊かな自然と,高品質な尾鷲ヒノキを生育させる「高密植多間伐」の手法をぜひ表現して取り入れたいと考えました.

ロゴの中央は,海山地域の特徴である海・川・山が作り出す豊かな自然がモチーフです.植林地もある山々と大台ヶ原を背後に熊野灘へと注ぐ2本の川を組み合わせています.また,その周辺には高密植多間伐という手法を取り入れている森を参考にし,苗木から間伐後までのヒノキを配置しました.

この生産方法は,文字の通り沢山の苗木を植え,手入れをしながらじっくり育てることで細やかで綺麗な年輪と木材として良い色合いと密度を持った高品質な材を作るためのものです.こういった一連の木々が育ち,木材になるまでの過程を茶色の帯に表現して,ロゴに組み込みました.

調印書中央には,丁寧に丹精を込めて長年育てられてきた尾鷲ヒノキの断面を表現しました.これには赤身・白太の綺麗な色合いや細かな年輪,枝打ちの跡があり,人と自然がお互いに力を出し合ってできる木材の美しさと,そこまでの歴史を象徴しています.

私は初めて海山植林地を訪問しましたが,林内の明るさに驚きました.ただ木材を求めて木を植えているだけでは,森は死んでしまいます.また適当に育てては,良い材を手に入れることはできません.人が自然に介入して,その恩恵を受けさせて頂くには,責任を持った手入れが必要不可欠です.そのため手入れが施され,良い材が育つ海山は,卒業生,速水林業の関係者や地域の方々をはじめとする,関わってきた多くの人が丁寧に受け継いできた歴史があるのだなと実感しました.

持続可能性や環境保全が積極的に叫ばれる昨今,教室や限られた空間で机上の勉強や文献だけに囚われることは実にもったいないことです.特に自然の分野では,身近にある環境やフィールドにぜひ足を運び,実際に触れることがとても重要です.自由学園が大切にする「本物に触れる学び」をもっと充実させるべく,自分ができる形で海山を始め自然に触れる魅力を沢山の人に共有できれば良いと考えています.

 

デザインを手掛けた調印書を手にする服部さん

 

服部さん製作の記念ロゴマーク

 

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文・写真:吉川 慎平(最高学部教員・環境文化創造センター研究員)

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