カリキュラム
ゼミナール - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】
カリキュラム
「社会をより良くする」ための実践的研究の深化を目指す
フィールドサイエンスゼミでは、地域の自然・地理・環境・歴史・文化・産業・インフラ・コミュニティなどを対象に、様々なスタイルのフィールドワークを展開し、各自の興味・関心領域を拡げると同時に、ゼミでのディスカッションを通じて相互関連性や課題・問題への認識を深めていくことから研究を始めて行きます。ここでの「フィールドワーク」とは、野山に出掛けての生物調査などに留まらず、図書館・博物館などを巡り文献や資料を収集すること、地域活動への参加やインタビュー調査を行うことなど、共通して「本物に触れる」という経験を指します。

ゼミ主任吉川 慎平
教授・博士(工学)
専門分野:環境河川工学、流域水文学、土木史、水文・気象観測
そして、フィールドワークを経てデータ化、言語化した情報について、多角的な視座で分析・比較・検討・考察し、「より良い地域・社会・環境をつくる」ための具体的提案につなげていきます。更に提案に留まらず、様々な技術を身につけつつ、可能な範囲で提案内容の実践に取り組み、提案の有効性の確認までを研究の範囲としています。こうした研究の成果は、広く社会に問うことを重視し地域行事や学術学会での発表等にも積極的に挑戦していきます。またその他の特徴として、学内各部署(環境文化創造センターはじめ幼・小・中・高・他)や他大学、市民団体、自治体との連携、企業との共同研究など、様々なネットワークを活用している点、農場や植林地を含めたキャンパスとその周辺地域を活用している点が挙げられます。これらを通じ社会で必要とされる課題を発見し解決へと導くための「実践力」と「総合力」を身につけます。

杉原弘恭
特任教授・博士(工学)
専門分野:経営学、経済学、環境システム学
デスクで、テキスト等で学ぶ理論やフレームワークは、もともと先人が多様な情報から抽象捨象して生み出したものです。ゼミでは、情報の多い現実の様々なフィールドに入り、学んだそれらをツールとして使って、応用したり、帰納と演繹のくり返しによってそれらの検証(肯定・否定)を行ったりする時間がとれます。また、情報量の多いフィールドは新たにイノベーションを生み出すことの素地にもなります。フィールドは、自然や社会そのものです。領域横断研究は、自然科学、社会科学、人文学、人間教育の先生方がクロスして応援してくれます。 From Desk to Field, From Field to Desk(& Laboratory) !

小田幸子
准教授
専門分野:農学、昆虫学
フィールドサイエンスゼミではさまざまなフィールドワークを通して、実物に触れることを大切にしています。ゼミ関連講義のほか、「日本の里山・里川・里海と地域デザイン(以下、「里山」)」「都市環境工学」が必修講義です。「里山」では「流域」を1つのフィールドとして、自然・環境だけではなく、文化・産業・インフラなどにも視野を広げます。春期は実際に見学を行って「流域」を体感し、秋期は各自がテーマを決めゼミ形式の講義で深めてまとめ、最終的には小さくても何らかの提案を行うことを目指しています。このような経験を通し、ひとり一人の興味・関心から研究が深化していくことを目指しています。

M.Nさん
2024年度3年生
シルクミュージアムにて
ゼミでは、「水」をテーマに水インフラ設備や国内外約700種類のペットボトル飲料水調査などを通して、研究の推進に必要な方法論を学んでいます。また、高2から興味があった蚕の知識を極めるため東京農工大学の聴講や各学会へ参加をしています。そこで専門に特化する研究の在り方にふれ、蚕の生物学的側面のみではなく、より広く文化としての蚕という新しい分野を追求したいと思うようになりました。情報整理力などの方法論を糧に、より学際的な研究を目指しています。
M.Aさん
2024年度3年生
速水林業の林内にて
私は、高校時代に体験した植林地(埼玉県飯能市)の木に関わる学びをきっかけに日本や世界で起こっている森林問題に関心を持つようになりました。学部では里山実習、フィールド研究、また学外の林業研修などを経て、自分にどのような貢献ができるのかを考えるようになりました。ゼミでは国産材利用の促進と木材を利用することの価値について考えています。自由学園の木材利用の向上を提案し、国産材の活用の可能性を探っていくような研究を進めたいと思っています。

2024年度卒I.Mさん
IT企業勤務
在学中の樹木調査
東久留米市向山緑地立野川源流域について研究しました。1.2年次に庭園・自然環境:草本・潅木グループでの実習から興味を持つようになりました。東久留米市から観察調査の許可をいただき、週に2~3度、向山緑地・立野川勉強会の方と協力しながら樹木調査や萌芽更新、ナラ枯れ等についての調査をしました。またゼミの先輩方の向山緑地に関する先行研究などをまとめ、地域の向山緑地としての在り方を模索しました。観察調査をする中で前回から変化した場所はないかなどの違いに気をつけながら地道に取り組みました。また取り組む課題が多かったため、先生と相談しながら計画的に取り組むようにしました。研究結果については学内の他に第28回東久留米市環境フェスティバルにてポスター発表、第136回日本森林学会でのポスター発表、2024年向山緑地若返り事業シンポジウムにて口頭発表する機会をいただきました。 現在はIT企業にて会社員をしております。新しい分野のため日々覚えることや試行錯誤することが多いですが、学部時代に地道に取り組んだ観察調査の経験等を活かして一歩ずつ学んでいます。

2022年度卒S.Yさん
工事測量企業勤務
在学中の河川水質調査
卒業研究では、地域の水循環をテーマに湧水や河川、地下水を対象に学園内や東久留米市を中心に調査・研究しました。ギャップイヤー制度を利用して東久留米市以外の地域に行って湧水や河川の調査をしました。また、半年間は愛知県の大同大学で講義を受けたり、同大学の学生と一緒に調査に行ったりしました。他にも定期的に学外で研究発表をしました。 現在は、測量の会社で働いています。測量の知識や技術に加えて、正確さと効率性が求められるため、仕事する仲間との連携が不可欠です。 卒業研究が生きていると感じることは、2つあります。一つは、ものの仕組みを理解できた時の面白さや楽しさに気付けるようになったことです。仕事でも覚えた知識を活かせると、面白さに気付けるようになりました。もう一つは、人への伝え方です。卒業研究で大変だったことは、自分が何をやっているかを発表したり、分かりやすく説明することでした。仕事でも、人によって経験も知識も性格も違うため、自分の意図が正確に伝わるように相手に合わせて、図を使ってより詳しく説明したり、工夫するように心がけています。

2017年度卒M.Kさん
児童発達支援事業所/保育士
地域の方々と古民家を改装
私は最高学部の後期課程において、埼玉県飯能市名栗地域(以下、名栗地域)をフィールドに、障がいのある方や死者・未来世代・自然などの声なき存在を含む多様な存在を包摂するコミュニティの持続可能性をテーマに卒業研究を行いました。研究では、人口減少が進む地域の新たな担い手である移住者がどのような背景で名栗地域へ移住しているのか、住民同士の支え合う関係を生み出す福祉組織はどのような活動をしているか調査を行いました。インタビューや参与観察を通じて名栗地域の方々に大変お世話になり、私自身名栗地域のコミュニティや暮らしに魅力を感じていきました。 現在は、飯能市の児童発達支援事業所で保育士として働きながら、獅子舞保存会や自然農でのお米作り、自伐型林業の研修等に参加し、名栗地域の人・自然との交流を深める生活をしています。また、卒業研究でお世話になった方々と共に、地域の廃業してしまった鮮魚店の古民家に手を入れ、世代を問わず誰もが安心して過ごせる居場所づくりを行っています。今後も名栗地域の方々と共に、コミュニティの在り方を考えていければと思っています。
2009年度卒W.Sさん
大学助教・博士(環境科学)
在学中の落合川調査
現在、鹿児島大学で生態学の教育・研究に従事しています。最高学部の卒業研究(テーマ別グループ研究)では「自然の理解と創造」グループに所属し、当時落合川に生息していた西日本在来淡水魚のタカハヤの由来を調査しました。この研究は生物・農芸研究室の主任であった村松幹夫先生(岡山大学名誉教授)が、落合川にタカハヤが生息し東日本在来のアブラハヤと混生していることを発見されたことに端を発しています。その後、大塚ちか子先生(元最高学部専任教員)を中心に諸先輩方が研究を発展させてこられました。私の卒業研究では、関東と西日本でタカハヤとアブラハヤを採集し、形態やDNA多型を落合川に生息する個体と比較し、由来を考察しました。 研究を通じて生物の地理的分布に興味を持ち、卒業後は大学院で植物の生態学を学びました。 現在は、野生植物の分布範囲や共存の可否が決まる仕組みを生物間相互作用の役割に着目して研究しています。身近な自然を記述し、その変化に気づくことは生物多様性理解の重要な一歩となると感じます。卒業研究でその営みの中に加えていただけたことは幸運なことでした。