今週の1冊『その扉をたたく音』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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図書館 お知らせ・近況

今週の1冊『その扉をたたく音』

2023年9月11日

2023年9月11
『その扉をたたく音』 瀬尾まいこ 集英社
「家族」や「中学校」を描かせたら、右に出る作家さんはいないのでは、と思うのが瀬尾さんです。そんな彼女がこの作品で描いたのは、20代の男性2人とお年寄りたちでした。瀬尾さんにしては珍しい場面設定だなと思って読み始めましたが、温かな瀬尾ワールドは健在でした。主人公の宮路は29歳無職。ギターを弾いていますが音楽でお金を稼げたことは一度もない。実家は裕福で、毎月高額の仕送りがあるので働いていないのです。もう一人の20代は渡部。彼はこの小説の舞台である老人ホーム「そよかぜ荘」の介護士です。宮路がここでボランティア演奏会をしたことがきっかけで、渡部の衝撃的に上手なサックス演奏を聴き、物語が動き始めます。そのサックスを聴きたいがゆえに毎週金曜日にそよかぜ荘に通うようになった宮路は、水木さんという90代のおばあさんから買い物を頼まれたのをきっかけに、何人もの入居者の方たちと知り合いになります。でも、みんながいつまでも元気なわけではない。老人と宮路の交流から、そして渡部の話からは、人の生き方、人生の閉じ方について考えさせられます。音楽が効果的に挿入されていて、「心の瞳」という曲を実際に聴きながら読むと心動かされる場面がありました。それも含め、最後の行まで読者を離さない小説です。

 

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