今週の1冊『算法少女』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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今週の1冊『算法少女』

2023年10月16日

2023年10月16
『算法少女』 遠藤寛子 著 ちくま学芸文庫
ちくま学芸文庫という学術系の文庫の中にあって、かわいらしい表紙が目を引きます。この本は始め児童文学として1973年に出版されたのち、2006年に和算を紹介した本として学芸文庫の中に復刊されました。
巻頭で、江戸時代の安永四年(1775年)に刊行された和算書「算法少女」の存在が著者によって紹介されています。その著者は町医者を父親に持つ庶民の娘だそうです。ただこの本は和算書の解釈本ではなく、江戸時代の少女「あき」を主人公とした江戸の歴史小説。戦のなくなった江戸時代の庶民の中に、読み書き、そろばんが浸透し、ことに和算が知的な楽しみとして広まっていることに驚きを覚えます。初出で製作された版画の挿絵がそのまま添えられ、生活の様子や和算をする雰囲気が伝わってきます。長屋に住む町娘のあきが神社に奉納された絵馬に書かれた算術の解に間違いを見つけたことから、大名家に招かれることになり、算法の先生でもある父や、母親の考え、世間のものの見方に違和感を持ちながらも、自らの流派や出自へのこだわり気づかされていく様子が描かれます。また、共に分かりやすく書かれている和算もおもしろい。また、あきの「九九をしらない子がひとりでもいることのないように」という情熱は、教育者であった著者の思いに重なるのかもしれません。江戸の流行あれこれを伝えるラストまで、楽しめる物語です。

 

 

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