今週の1冊『〈生かし生かされ〉の自然史』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2024年9月23日
2024年9月23日『〈生かし生かされ〉の自然史──共生と進化をめぐる16話』渡辺政隆 岩波書店猛暑続きの夏の出口がやっと見えてきたようです。異常気象と一言で片づけることは決してできない不安を、暑さと共に抱えて過ごした夏だったように思います。この本は生物の種を越えたつながりを綴ったエッセイ集です。著者はダーウィンの「種の起源」やファラデーの「ロウソクの科学」の翻訳も手掛けられたサイエンスライターです。過去の科学者たちの「素朴な観察」と同じ着眼点から見たものが、時代を経て発展した科学の新知識に至るまでの広い知見を駆使し、科学愛でまとめ上げて書かれています。引用されるのは古今東西の科学書から、最新の原著論文から、文学から、HPの情報から。例えば16話中9番目の「菌類異聞」。キノコから始まって毒キノコ、線虫、ピーター・ラビット、南方熊楠、サルオガセ、地衣類の共生へと話が進む。小ぶりな本の中に広がっている宇宙の大きさに圧倒されました。それなのに、「へぇー、ふーん」と思いながら読み進められる平易な文と、ときに「クスッ」となるユーモアも交えた、楽しく読める本でした。「地球上の生物はみな、単独では生きていけない」「地球は今大きな転換点にある」。視野を広げてありのままの自然の姿を受け入れて、自分の立ち位置を考え直す機会をいただきました。
図書館・資料室のご利用 についてはこちら