今週の1冊『私たちの世代は』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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図書館 お知らせ・近況

今週の1冊『私たちの世代は』

2024年9月17日

2024年9月17
『私たちの世代は』瀬尾まいこ 文藝春秋 
2020年、コロナ禍での学校一斉休校のとき、小学生の子どもたちはどんな気持ちだったのでしょうか。大人も大変ではあったけれど、何より1年が大人よりもずっと濃い小学生はその貴重な時代を未知の感染症のおかげで台無しにされた、という気持ちが強いのではと思っていました。瀬尾まいこさんのこの作品は、ちょうどあの頃小学生だった子どもたちが主人公です。母子家庭で愛情深い母親に育てられている冴と、私立小学校に通い、幼児教室の先生をしている母親がいる心晴。全く違う環境で育つこの二人を軸に物語は進みます。心晴はやっと小学校が再開されるという小学4年生のときに遭遇した出来事から学校に行かなくなり、冴は母親が夜の仕事をしていることでいじめにあいます。ですが、それぞれに周りの人とのつながりが少しずつ積み重なって、一歩ずつ前進していくのです。小学校時代の冴の同級生で、育児放棄家庭で育った清塚や、冴の近所に住む老人たち、不登校の心晴の家庭教師をする樋口など、『そしてバトンは渡された』の作者が描く周辺の人たちの描写はさすがで、物語の起伏と共になにかじんわりとした温かみを感じさせる作品となっています。スペイン風邪の記録が少ないように、コロナ禍の記録は事態があまりにも急激に進み、わからないことが多かっただけに記録が少ないのではという危惧がある中、小説とはいえ当時の「子ども」の心情をこれだけリアルに描写している本作は、記録資料としても貴重なのではと思いました。

 

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