今週の1冊『とびこえる教室』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2025年12月1日
2025年12月1日『とびこえる教室 フェミニズムと出会った僕が子どもたちと考えた「ふつう」』星野俊樹著 時事通信社 この本は、著者である星野さんが小学校教諭として児童たちと共にジェンダー平等について考えた実践が収録されています。 全7章中前半3章は著者である星野さん自身の生い立ちが書かれています。虐待とDVがあった壮絶な環境の家庭ですが、なぜそこまで著者が自身の生い立ちをさらけ出してこの本をつくったのかは、終章で明らかにされます。 著者は私立中高一貫校で男子部女子部にわかれた環境で過ごします。そこで出会った着任2年目の女性教師・毛利先生から、大きな刺激を受けます。本書の中では毛利先生との対談も収録されているのですが、この部分には教師という仕事の面白さがぎゅっと凝縮されています。ジェンダー平等について、それぞれが自分の頭で考え、行動できるようにと星野さんは試行錯誤しながら実践していきますが、ある年、卒業していく6年生に「自分の人生の主導権を他人に渡すな」という言葉を贈ります。また毛利先生も生徒たちに「あなたの人生の操縦士はあなた。絶対に操縦桿を離してはいけない」と伝えていました。この2人の言葉、羽仁もと子の「自分の生(いのち)の経営」にも通じる部分があり興味深いです。 また、星野さんの実践は「性別にとらわれない」と「あえて性別にこだわる」の両方を視野に入れていることが特徴です。「一人の人間として見る」ことは教育現場の鉄則ですが、それだけでは学校という社会にさまざまな理由で持ち込まれるジェンダー構造が見えなくなるというのです。この指摘は重要です。私たちが「ふつう」と思っていることは、本当にそうなのか? 一度疑ってみるためにもぜひこの本を手に取ってみてください。
図書館・資料室のご利用 についてはこちら