今週の1冊『デジタル脳クライシス』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2025年12月15日
2025年12月15日『デジタル脳クライシス』 酒井邦嘉 朝日新書「教育におけるAIの利用は、百害あって一利なしだと断言できます」ときっぱり書いているのは言語脳科学者の酒井邦嘉氏。この本に上記の断言(p229)の理由が書かれています。特に多くのページを割いているのは、鉛筆でノートをとることと、キーボードをたたいて文章を打ち込むこと、その両者の違いです。 授業でノートを取るとき、教師が板書したことを逐次書き写していてもあまり効果はありません。教師が話していること、板書していることを見ながら内容を理解し、要点と思われる部分を、メモすることで脳はフル回転し、そこで扱われた事項について理解を深めることにつながります。一方、パソコンを持ち込んでキーボードで打ち込むときには、どうしても教師が話していることを逐次的に書き込もうとしてしまうため、ある意味たいして重要でない部分も入力してしまう傾向があるそう。そして実験結果としても手書き群の方は、パソコン利用者よりも内容を理解していることが実証されているのです。AIについても、酒井さんは「生成AI」ではなく「合成AI」という言葉を用いて、その特性を解説しています。つまりAIというのは、人のように0から1を生み出すのではなく、既にあるもの(データ)をアルゴリズムに従って組み合わせている(合成)のだ、と。今自分たちが利用しているものの構造を理解すると、何にその道具を使うのが有益か、または何には使わないほうがよいか、が見えてくると感じさせられます。 タイパ、コスパの流れが教育現場にも流れ込み、同時にGIGAスクール構想によってIT機器を積極利用する試みが日本中の教育現場で行われていますが、人間が本当に豊かに生きるためには何が必要で、そのための方法はどれがよいのか、を今一度じっくり吟味する必要がある、と思わされる一冊です。
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