今週の一冊『アートとしての裁縫教育』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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今週の一冊『アートとしての裁縫教育』

2026年2月16日

2026年2月16
『アートとしての裁縫教育 大正期から昭和初期、生活と芸術のための改革』清重めい著、東京大学出版会、2026年

まず何より題名に驚かされます―「アートとしての裁縫教育」って?さらなる驚きは、ここには自由学園草創期(~1940年頃まで)の裁縫教育の実践が実に詳しく紹介されており、しかも「全く新しい観点から」捉えられているのです!

今、私たちの衣生活の大半は既製服で占められており、男女共修カリキュラムとなって久しい「技術・家庭科」において実際に糸や布を扱う「裁縫」に割かれる時間数はごくわずか。さらに、こうした手の仕事が長く女性の領域と見なされてきたゆえか?これを書いている私自身(女性です)、「女の仕事」である(あった)裁縫や料理について「考える」ことを、これまでどこか避けてきた気がします。

本書の著者・清重めい氏は「女子教育」として機能してきた裁縫教育を歴史的に検証していきます。大正期から昭和初期にかけての洋装化の広がり、女子中等教育の拡大、大正新教育の登場等を背景に、裁縫教育にはいくつもの重要な改革がもたらされました。清重氏はなかでも裁縫教育と美術教育のつながりに着目し、自由学園の実践を「アートとしての裁縫教育」として詳細に検討していきます。羽仁もと子の服装教育観、裁縫教育と美術教育の融合、美術家・山本鼎らとの協働、和裁と洋裁の合理化、学校教育を越える社会的展開、戦時期裁縫教育における「美化」と「合理化」の行方など。裁縫指導者の発言や実践、生徒の取り組みが生き生きと記述されています。

ところで著者は「アート=芸術(美術)」という捉え方だけで「アートとしての裁縫教育」を言っているわけではありません。実用としての技術、精神的なもの、手指を動かすことそのものに付与された価値等も含めて「アート」として捉えることを提案しています。ここで用いられる「アート」とは、英語の”art”の原義に近く、実用と美が分離する前の「アート」であり、わざ・技術・技量・美・学問としての知識を含む広義の言葉として採用されています。

「アートとしての裁縫教育」という捉え方は女子教育としての裁縫教育という認識を解放するのだ―著者は読者に語りかけます(214頁)。思わず膝を打ちました!広い意味での「アート」の観点から、裁縫だけでなく私たちの生活や学びをとらえ直すことで、どんなことが見えてくるでしょうか?

※表紙に自由学園の裁縫教育の写真が使われています。

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