今週の一冊『文系と理系はなぜ分かれたのか』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2026年9月7日
『文系と理系はなぜ分かれたのか』隠岐さや香 星海社新書、2018年
「自分は文系/理系のどっち?」―日本の高校までの教育機関で学んだことがあればおそらく考えたことがない人はいないといっても良い定番の問いの一つが、「文系」と「理系」というたった二つ(!)のカテゴリーで自分自身の学習傾向を決定づけようとする、あの考え方である。
本書はほとんど自明視されているといってよいこのような学びの分け方、上の問いに合わせていえば「/」(スラッシュ)に込められた意味とその歴史的背景に迫るコンパクトな学問史の一書である。
古代ギリシャ・ローマを起点として学問の歴史全体を眺めたときに「文系/理系」の間が鋭く区別されるようになったのは実は比較的最近のことであり、とりわけ近代の大学制度が整備されていくプロセスの中で徐々に形成されたものであったことを、本書ではヨーロッパと明治以降の近代日本の歴史を時系列に沿って解説し(第1-2章)、第3章以降は今日の大学生の就職活動に影響を及ぼす産業界やジェンダーとの関連から「文系/理系」の区別がもたらす帰結と問題点が洗い出されていく。
今日産業界などからの「文理融合」の要請も相まって「教養」の重要性が広く謳われているが、事がそう単純ではないことを著者はそれぞれの学問領域の内部や間で交わされた論争や扱う対象の複雑さをもとに慎重に訴える。「分けて考えないと情報量が多すぎるが、分けてしまうと元の姿がわからなくなる。要素への還元と、全体性の理解とは両立が難しいのです」(本書208頁)。
学問の凄まじい細分化が進む現代、これから大学進学を目指す人はもちろん、「学問」や「科学」の本質について一度立ち止まって考えてみたい人にとって本書はすぐれた指南書になるに違いない。(田)
図書館・資料室のご利用 についてはこちら