5月29日(日)、最高学部の講義「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」の見学として、埼玉県南西部、武蔵野台地北部に位置するふじみの市、三芳町、所沢市、新座市周辺に出掛けました。本講義についてはこちら
直前の講義の中では、南沢キャンパスを取り巻く地域が「武蔵野台地」に位置することを確認し、日本の里山のモデルの一つとしての「武蔵野」について理解を深めました。今回は希望者のみのオプションツアーとして、複数の特徴的な現場を訪ね「新しい武蔵野」をイメージする機会を持ちました。
当日は学園から車で出発し、車中、黒目川や柳瀬川が形成した谷地形や、周辺の土地利用の特徴(畑や雑木林の中、倉庫や工場、各種ヤード、墓地などが点在している様子)を確認しながら移動しました。
始めに埼玉県指定旧跡となっている三芳町の「三富新田」地区に入り、短冊状の開拓地の構成(平地林・耕作地・屋敷地)を確認した後、「旧島田家住宅(古民家)」を見学しました。井戸の深さなどから開拓地で水を得る苦労を感じました。現在も続いている当地での循環型農業は、「武蔵野の落ち葉堆肥農法」として日本農業遺産に登録されています。続いてふじみの市の大井郷土資料館で、地形の特徴や縄文時代の遺物、川越街道の宿場であった当時の様子など当地の歴史を確認しました。
続いてメインの見学先である三芳町の「三冨今昔村」を見学しました。この場所は近年その経営手法などで注目されている産業廃棄物処理業の石坂産業(株)が、工場周囲に整備している里山(サステナブルフィールド)です。2018年には最高学部のマネジメント講座Fでも石坂典子社長のお話を学生が伺っています。当日は日曜日であったため、多くの親子連れが里山を楽しんでいる様子が見られました。
続いて、武蔵野の文化・歴史を看板として掲げる所沢市の「ところざわサクラタウン(角川武蔵野ミュージアムを中核とする複合施設)」で昼食休憩としました。最後に、新座市の平林寺境内林付近で車を降り、現在は下水処理水を用いて水辺が再生されている野火止用水緑道を散策し、夕方学園に帰着しました。
また道中3箇所で、流域の下水道と自治体の特徴などの情報を凝縮したミニ版パンフレットである「マンホールカード」を収集し、流域自治体への理解を深めました。
参加した学生から「車窓からいつもなんとなく見ている景色も、今自分がどのような場所にいるのかということを理解して見ることで、かなり景色の見え方が変わって面白かった」「三富今昔村は自然の中で楽しめるような設備(ベンチや落ち葉プール)や、神社やカフェなど人を引き付ける物がある事により自然に付加価値を付け、普段自然を気にしていない人も環境のことなどを考えるきっかけにしているところが興味深かったかった。自然と共に自然の中で過ごすという様子を感じて、もしかするとこれが近代的な里山なのかなと考えた」「その土地の成り立ちや地形には歴史が深く関わっていたことがよく分かりました。野火止用水などの人間が作ったものが背景を知らないと元からあるように感じるのが面白いと思いました」といった感想が聞かれました。
次回は南沢キャンパスを含む広大な荒川流域を捉える見学を予定しています。
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文・写真:吉川 慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)