講義「日本の里山」で荒川流域の見学を実施(1回目)/教養・専門 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

講義「日本の里山」で荒川流域の見学を実施(1回目)/教養・専門 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

教養・専門

講義「日本の里山」で荒川流域の見学を実施(1回目)

2022年6月24日

6月19日(日)、最高学部の講義「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」の一環で、丸1日をかけて荒川流域を概観する見学を実施しました。乗車定員とコロナ対策の関係で2度に分けて実施することとし、1回目の今回は1年生と4年生の4名が参加しました。
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当日は7:30に学園を出発し、武蔵野台地から荒川低地に向かっての地形変化を確認しながら、今回訪問する中で最下流地点となる(独)水資源機構管理の秋ヶ瀬取水堰へ移動しました。秋ヶ瀬取水堰は荒川本川から東京と埼玉方面へ水道原水等を取り入れる重要施設であり、東京湾からの潮水の遡上を止める機能も担っています。続いて、植林地のある名栗地域を水源とする荒川水系最長の支川である入間川との合流点(背割り堤)を、国道16号線上から確認しました。続いて、鴻巣市付近で、流れ幅(水面は数10m程)の狭さと、それに対する川幅(堤防〜堤防)の広さを比較し、中でも川幅日本一といわれる鴻巣市と吉見町を結ぶ御成橋付近(2,537m)を実際に渡りました。続いて、利根川の水を荒川へと融通するために作られた武蔵水路末端の荒川合流点に近づき、時には荒川本川の流量を上回る大量の水が利根川からもたらされていることを直接確認しました。

 

秋ヶ瀬取水堰にて

 

武蔵水路合流点の様子

 

続いて、熊谷市付近での荒川の瀬替えの歴史と、旧河川となった元荒川の様子を確認しつつ、元荒川最上流のムサシトミヨ生息地と熊谷市ムサシトミヨ保護センターを訪問しました。ムサシトミヨはトゲウオ科の淡水魚で、水温・水質が低位安定した湧水環境にしか生息することができない希少種です。かつては武蔵野台地周辺の湧水にも生息していました。35年に渡り、保全活動に取り組んでおられる熊谷市ムサシトミヨをまもる会会長の江守和枝様から直接お話を伺うことができました。

 

熊谷市ムサシトミヨ保護センターを見学させていただく

 

そしてメインの見学先である寄居町に位置する埼玉県立川の博物館には11:30に到着しました。学芸員の羽田武朗様から日本一の大きさを誇る荒川大模型173(荒川の源流から河口までの地形を1000分の1に縮小した地形模型)を使って、流域の全体像を解説いただきました。午前中のコースの復習と、午後のコースの予習という点でとても贅沢な時間でした。その他常設展示や企画展示の見学と昼食休憩を取り、13:30に出発しました。

 

荒川大模型173を使った解説を伺う

 

大模型で校内を流れる立野川下流の黒目川を発見!

 

午後は発電・農業用水の取水を行なっている玉淀ダムを見学し、続いて、長瀞町の埼玉県立自然の博物館を見学しました。更に上流へ遡り、秩父市街を抜けて武甲山山麓の冷ややかな湧水に触れ、荒川支川の浦山川に入りました。そして次のメイン見学先である(独)水資源機構管理の浦山ダムを見学しました。(一財)日本ダム協会認定のダムマイスター、秩父4ダム連携検討会認定の秩父4ダム特使でもある吉川が、ダムの基本的な設備や機能をはじめ、浦山ダムの特徴について解説しました。浦山ダムは「地域に開かれたダム」で、ダム本体内部の見学やエレベーターを自由に利用することができます。男子学生はあえてダムの両岸のフーチングと呼ばれる箇所に設置された階段(高低差124.5m、段数498)を使っての登頂に挑戦していました。併設された防災資料館の展示を見学した後、記念にダムの情報をコンパクトにまとめたミニ版パンフレットである「ダムカード」も入手しました。

 

秩父の湧水に触れる

 

浦山ダムの階段登りに挑戦!

 

浦山ダムを後にし、石灰石の採掘が行われている武甲山を眺めながら、名栗植林地の下流に当たる荒川支川の横瀬川沿いを遡り、山道を抜けて狩場坂峠(標高:818m)、更には自動車で行くことができる堂平山山頂(標高:876m)に移動しました。360度のパノラマと、荒川支川都幾川・槻川流域を眼下に、遠く関東平野を俯瞰する今回のハイライトです。
以上を周り19:30頃学園に到着しました。

 

狩場坂峠にて立体地形図で現在位置を確認する

 

堂平山山頂にて

 

今回、日帰りという制約から、下流部や原流域を訪ねることはできませんでしたが、これをきっかけに是非個々に訪ねてもらえればと思います。また後期での荒川をテーマにした共同研究に発展していくことを期待しています。
参加した学生からは「見学以前から調査などで既に得ている情報や、あまり詳しく見たことがない下流域について学ぶことができる良い機会だった。今回の見学で得た荒川流域についての情報を整理することができたと思う」、「今回の見学では荒川を中心に巡ったが、博物館などの施設も川とは関係ない展示が面白く、目を引くものがたくさんあった。荒川の形や実態を五感で感じることのできる見学だった」「荒川の様々な支流や、水の使われ方を実際に見ることができた。自然としての川だけでなく活用される川も見ることができとても楽しかった」といった感想が聞かれました。

 

今回のルート

 

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文・写真:吉川 慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)・小田幸子(最高学部教員・環境文化創造センター次長)

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