9月20日・21日に最高学部3・4年生の男子学生を対象とした特別講義を開講し(対象学生はどちらか1日に出席)、講師は環境文化創造センターの吉川が担当しました。既報の通り、最高学部ではコロナ禍での「新名栗フィールド」での植林活動の中断を機に、2022年度から男女学生が参加する新しい「飯能・名栗フィールド活動」を開始しました。
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一方で、最高学部進学時に「新名栗フィールド」での植林活動を卒業要件として提示していた学年については、現状として宿泊を伴う長期間の活動は困難であるため、昨年度から南沢での特別講義受講によって活動の代替とすることとしました。2022年度も3・4年生の男子学生がこれに該当するため、今回の講義を行う運びとなりました。他方、対象学生のうち希望者については1・2年生と同様に飯能・名栗フィールドでの活動の機会を設定することとし、呼びかけを行いました。
講義は、対象学生全員が男子部(高等科)で名栗植林地での活動を経験していることから、これを共通の土台に、代替講義であるものの、特別な機会になるよう「自校史として振り返る自由学園の植林活動」と題し準備しました。初めての試みとして近刊の『自由学園一〇〇年史』と、創立者羽仁吉一先生の『雑司ヶ谷短信』の一部をテキストに用い、(1)植林活動はどのような想いで始まったのか?、(2)どのように活動が展開して来たのか?、(3)当時の時代背景や関係する国の政策はどのようなものだったのか?、(4)現在、そして将来の課題は何か?という4つの視点でみていくことにしました。
自由学園図書館に用意されている校内貸出用の年史を配布し、第Ⅲ部第5章の那須農場の冒頭、『雑司ヶ谷短信』の「男子部の夢」「那須農場縁起」に続き、第6章の植林活動を全員で輪読しました。年史を手に取ったことのある学生が少ないことから、講義中に最高学部など興味のある箇所を自由に眺めることも推奨しました。また、内容に対応して、植林地の写真や地図などを随時投影しました。
リフレクションシートからは「歴史を振り返ってみると、名栗に決まった理由、植林を始めた経緯、多くの出来事と想いから今の植林活動に続いていることが発見でき関心が深まった」「創立者が思い描いたことが、過去の学生の手によって自然を守りながら、自然と共生できるようなフールドとして作り上げてきたと思うと感慨深い」「那須農場や植林活動は創立者の構想の実現と同時に、食糧生産や拡大造林政策等の日本社会への貢献という一面を持っていた事は興味深い、自治体との連携等、実社会での活きた教育であると再認識した」といった感想が聞かれました。全体として今回読み聞きしたことと、高校生の時に実際に体を動かして働いた経験が「繋がった」という印象です。
今回の講義を通じて、創立者の想いは元より、年史にまとめられた自校史(事実関係)をきちんと抑えた上で活動に臨む、或いは振り返ることの有効性を再確認しました。今後の「飯能・名栗フィールド活動」にも、創立100周年を機にまとめられた年史やデジタルアーカイブなどのコンテンツを有効活用していけたらと考えています。
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文・写真:吉川慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)・小田幸子(最高学部教員・環境文化創造センター次長)・神明久(最高学部副学部長)