1年生対象の新しい「飯能・名栗フィールド活動」がはじまる/学生生活・学外活動 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

1年生対象の新しい「飯能・名栗フィールド活動」がはじまる/学生生活・学外活動 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学生生活・学外活動

1年生対象の新しい「飯能・名栗フィールド活動」がはじまる

2022年5月8日

自由学園には,那須農場をはじめ飯能・名栗フィールド(名栗植林地・新名栗フィールド)や海山植林地などのフィールドがあります.しかし,2021年12月からのコロナウイルス感染拡大状況により,生徒・学生のフィールドでの活動が制限されて来ました.現在も依然としてコロナウイルスの影響下ではありますが,学園では予防策を講じて出来る限り対面授業を行っています.

4月30日,まずは「フィールドを知る」ということを目的に,学部1年生全員を対象にした新しい「飯能・名栗フィールド」での活動を行いました.
これまでの経緯についてはこちらをご覧ください.

 

新名栗フィールド・1ノ山(名栗すこやか村)の古民家前で柏木正之さんを囲んで

 

当日は好天に恵まれ,学部1年生は西武秩父線正丸駅に先発・後発の2グループ(各13~15人)に分かれ8:30と9:30に集合.ここから,それぞれ教員1名が引率し徒歩で約1時間かけ正丸峠に向かいました.峠で小休止を取り林内に入る装備を整えた後,3~5名の小班に分かれ植林地内の散策を行いました.
作業道が整備された林内は昨日までの雨の影響も殆どなく,歩きやすかったと思います.約1キロメートルの作業道を少し歩くと,気象観測機器が設置されており,その脇でティーチングアシスト(TA)として参加した水文・気象観測室リーダーの4年鈴木祐太郎さんから解説を聞き,男子部生が植林し約70年生となった見事なスギ,ヒノキの間を縫って,5か所に設置されたクイズの問題を班ごとに考えながら小一時間の散策を行いました.散策の最後には男子部生が植林・育林作業の際に使っていた名栗作業小屋も見学することができました.

 

正丸駅前でミーティングと準備運動

 

晴天と新緑の中、正丸峠に到着

 

70年生のスギ林の中を散策する(名栗植林地)

 

TAとして参加した4年生から気象観測機器の解説を受ける

 

森の様相を観察しながら散策を楽しむ

 

班ごとに協力してクイズラリーに挑戦

  

植林地の散策の後,正丸峠の奥村茶屋にて,昼食(お弁当)をいただきました.正丸峠からのスカイツリーまでが一望できる素晴らしい眺めを堪能し,2台の車で上名栗の古民家へピストンにて移動しました.古民家と呼ばれる家屋は男子部19回生の柏木正之さん(元名栗村村長,大松閣代表取締役会長)が代表を務める(一社)名栗すこやか村が管理するもので,古民家の背後の山が新名栗フィールドの1ノ山となっておりコロナ禍の前までは,学部の男子学生が育林労働を行っていました.

柏木さんは今年82歳になられますが,とてもお元気で,ご自身が学園に入学されてから名栗村に戻るまでのこと,その後乞われて村長となったこと,飯能市との合併について,また学園が名栗で植林を始めた当初のこと,そして名栗村の現在の課題,ご自身が大切にしていらっしゃることをお話くださいました.柏木さんが学園に入学された当時は小学校の同級生が80人いた(その内,私立中学に進学したのは柏木さん一人.多くの人は中卒で働くのが当たり前だった時代)が,現在の名栗小学校は1学年6人にまで児童が減ってしまっていること,山の木には捨てるところがなく山さえあれば生活に困らないという時代から,山だけではやって行けない時代になっていったこと,そのような変化の中で地元のために何ができるかということを常に考えて行動されてきたことを伺うことができました.特に自分と学園の関係から,学部生に森を生かしてもらい地域の交流人口を増加させるということや,実際に若い人が地域で活動することを地域も喜んでいるというお話は,学部1年生の心に響いたようでした.また,「山を一回人工林にしたら手を加え続けなければならない.源流域の環境は都市部にとっても大切である」「南沢の学園の美しさには誰もが感動するが,自分を含め誰もがその景観から知らず知らずのうちに影響を受けて,それによって育まれて行くものがある」「自分のものでないから,お金にならないから,ということで環境や景観の維持・保全に対して関心を示さない人もいるが,自分は景観・環境は共有財産であるという考えで行動してきた」という言葉も印象的でした.

柏木さんのお話を全員が集中して聞き入っていました.質疑応答の後,14:50頃古民家で解散し路線バスを利用して帰路につきました.

 

奥村茶屋で名物の正丸丼をいただく

 

かつて蚕室に使われていた古民家の2階を見学させていただく

 

柏木さんから名栗地域の現状と展望について伺う

 

路線バスを利用して帰路に着く

 

今回,学部1年生全員を対象にこのような企画を実施できたことはとても意義深いものであったと思います.これまでは,男子部生は名栗での労働を行っていましたが今回参加した男子学生は1回も名栗に行ったことが無い,という学生も多く,女子学生も含め全員が飯能・名栗フィールドの存在を知ると共に,実際に訪れるという経験ができました.初めて名栗に行った学生からは「意外に近くに植林地があった」「当時の男子部生の労働に思いをはせた」「楽しかった.また,名栗で何かすることがあったら参加したい」「地域おこしや木材の利用ということに関心がある」といった感想がきかれました.今後,組の時間を使ってクイズの回答など活動の振り返りを行う予定です.

最高学部では今年度から主に学部1年生を対象とする「コミュニティ・人間中心のデザイン概論」「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」といった講義が開講されていますが,これらの講義とも今回の企画は関連性を持っています.また,2年生以上にも飯能・名栗フィールドを使った活動を順次展開していく予定です.学園のフィールドを存分に活かしながら,学部生活においての実習や研究が更に発展していくことが期待されます.

 

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文:小田 幸子(最高学部教員・環境文化創造センター次長)
写真:吉川 慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)

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