6月26日(日)、「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」の受講生対象の荒川流域見学第2回目を行いました。欠席の学生もあり、1年生3名、2年生1名が参加しました。前日に群馬県伊勢崎市で最高気温40.2℃を記録したこともあり、猛暑に備えつつの見学となりました。
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7時26分に学園を出発して、秋ヶ瀬取水堰に向かいました。ここは、独立行政法人水資源機構が管理している超重要施設であること、ほぼ100%都水を利用している光風寮にはここから水が来ていることなどの解説がありました。荒川の上流に向かいながら、中山道の宿場町であり人形作りで有名な鴻巣の鴻巣市産業観光館「ひなの里」に寄り、展示されている古い雛人形などを見学し、マンホールカードもいただくことができました。カードには市の花のパンジーがデザインされたきれいなマンホール蓋が紹介されています。また、ここで鴻巣市の名物「川幅うどん」を購入する学生もいました。「川幅うどん」というのは通常のうどんよりもずっと幅広く作られたうどんです(乾麺で7~10センチ)。実は鴻巣市と隣の吉見町の間を流れる荒川は川幅日本一となっており、「ひなの里」を出発したのち実際にそこを通って2,537mの川幅を体感しました。川幅というのは、堤防と堤防の間を指すので通常の川の流れ幅は本当に狭く感じられました。河川敷には麦畑などが広がり、橋を渡ったあとも横堤という川に対して垂直方向に作られて堤防がしばらく続きます。穏やかな川の流れを見る限り、これだけの堤防を必要とする洪水の様子は想像し難く感じました。
その後、利根川からの水を荒川に導水している武蔵水路を見学し、熊谷市のムサシトミヨ保護センターに向かいました(センターは休館日)。ムサシトミヨはトゲウオ科の魚で、現在では元荒川の源流にのみ生息する大変貴重な魚です。10時30分時点気温は34.3℃でしたが、センター近くを流れる元荒川の水温は14.9℃で、ムサシトミヨが清浄な冷水域にしか生息できないと言われていることを実感できました。
11時過ぎからは、埼玉県立川の博物館の見学を行いました。最初に荒川流域の地形を1000分の1の縮尺で再現した「荒川大模型173」を使って、2度目の今回も学芸員の羽田さんより解説をしていただきました。改めて、川というものが長い時間をかけて地形を変化させ自身の流れも変えてきたこと、更に人間の手によっても形を変えられてきたことを確認する機会ともなりました。また、丁度館内ではサテライト展示で埼玉の火山灰台地の開拓の歴史、舟運や農業について紹介されており、5月末に見学した三富新田についても触れられていました。
川の博物館見学・昼食休憩の後、玉淀ダムに寄り、長瀞にある埼玉県立自然の博物館を見学し、武甲山の伏流水である不動名水を訪ね冷たい水を味わった後、いよいよ午後の見学のメインである浦山ダムに向かいました。浦山ダムはダム内部が見学できる数少ないダムです。ダムの下部から内部に設置されているエレベータを利用してダムの上部(天端)に登りました。ここでは、吉川慎平先生((一財)日本ダム協会認定のダムマイスター、秩父4ダム連携検討会認定の秩父4ダム特使)より詳しい説明を伺い、資料館を見学しました。先に訪れた玉淀ダム、そしてここ浦山ダムでもダムカードを頂きましたが、カードには各ダムの情報が簡潔に記されており、玉淀ダムは発電および農業用のダムであるのに対し、浦山ダムは多目的ダムであることなどの解説も受けました。
その後、刈場坂峠を通って本日最後の見学地である堂平山山頂(標高876m)に向かいました。360度の展望があり荒川支流の都幾川、槻川の流域を見ることができること、関東平野も一望できることなど、川の博物館の模型で見た荒川流域を実際のスケールで感じられる景色でした。
参加学生からは「荒川周辺を巡って、高校生の時に学習した三日月湖や扇状地、V字谷などの知識を実際に確認することができた。ダムの上からの景色も素晴らしかったし、内部を見るということも貴重な経験だった」「川の博物館では、荒川の始まりから終わりまでや堤防の種類や役割、川の流れを変えるようになった背景の歴史などを知った。この話を聞いて度々思ったのは、埼玉だけに特殊な堤防があったりして氾濫の対策をしているのに東京は埼玉に頼りすぎている気がした」「今日の見学の主人公は浦山ダム(多目的ダム)だった。下流に適切な状態で水を送るための装置があったり、きちんと管理されていることを知ることができた」などの感想がありました。
今回の見学で「日本の里山・里川・里海と地域デザイン」春期の見学は終了です。秋期では各自の関心分野を掘り下げつつ、共同での研究に発展させていく予定です。
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文・写真:小田幸子(最高学部教員・環境文化創造センター次長)・吉川 慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)