6月19日(金)10時40分~12時20分に、最高学部棟中教室で共生共創プログラムイベントとして第7回共生共創フォーラム「震災15年、陸前高田の再生を目指して」が開催され、最高学部学生のほか、オンラインで31名の方が参加されました。
今回は、講師として船戸義和さん(岩手大学客員准教授・自由学園最高学部卒)と小出愛菜さん(陸前高田しみんエネルギー)をお迎えしました。
船戸義和さん(岩手大学客員准教授)のお話〈要約〉
本日は、「暮らしの環境を整えるコミュニティの再生」をテーマに、東日本大震災後の陸前高田市での取り組みについてお話しします。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0という世界最大級の地震でした。岩手県沿岸部には20メートルを超える津波が押し寄せ、多くの人命と建物が失われました。陸前高田市では、人口約2万3千人のうち1,500人以上が亡くなるという甚大な被害を受けました。被災者は避難所、仮設住宅、災害公営住宅へと移り住みましたが、その過程で地域コミュニティが何度も分断されました。避難所への移動、仮設住宅への入居、公営住宅への転居という三つの段階で、人と人とのつながりが失われる機会があったのです。
現在、岩手県の災害公営住宅には多くの高齢者が暮らしており、高齢化率は県平均を大きく上回っています。また、一人暮らし世帯も多く、入居者の出身地域や生活背景はさまざまです。そのため、隣近所であっても顔や名前を知らないという状況が生まれています。さらに、仕事や介護、健康上の問題を抱える人も多く、地域活動を進めようとしても一部の住民に負担が集中しがちです。そのため、住宅という「ハード」だけでなく、安心して暮らすための「ソフト」としてのコミュニティづくりが必要になります。
そこで取り組んでいるのが自治会づくりです。自治会を設立し、住民自身が地域運営に関わることで、自立したコミュニティを形成していきます。その際に大切なのは、行政や支援者が主導するのではなく、住民同士の話し合いを重ねながら進めることです。自治会設立準備委員を住民の話し合いによって選出し、多くの人が参加できる仕組みをつくります。時間はかかりますが、自分たちで決める経験を通して、「地域は自分たちでつくるものだ」という意識が育まれます。
コミュニティづくりの中心テーマとして活用しているのが防災です。防災は誰にとっても重要な課題であり、住民が参加しやすい共通の目的だからです。自治会では消防訓練や避難訓練を実施しています。訓練では、一人ひとりに小さな役割を割り当て、多くの住民が参加できるよう工夫しています。役割を通じて住民同士が顔見知りになり、高齢者や支援が必要な人の存在にも気づくことができます。こうした活動は単なる防災訓練ではなく、人づくりや関係づくりの機会となっています。災害時に最も重要なのは地域コミュニティであり、普段から声を掛け合える関係が命を守る力になるのです。震災直後の避難所でも、コミュニティの力の違いが見られました。ある地域では住民同士が協力してドラム缶風呂を作り、自分たちで風呂がないという課題を解決しました。一方で、人間関係が希薄な避難所では、行政支援を待つしかない状況もありました。この経験から、人と人とのつながりが維持されている地域には、自ら課題を解決する力があることが分かります。地域コミュニティは、防災だけでなく、防犯、福祉、環境整備、文化活動など、暮らしを支える多くの役割を担っています。
コミュニティは自然にできるものではなく、意識的で継続的な取り組みによって育てられるものです。何もしなければ地域力は低下しますが、話し合いや実践を積み重ねることで地域力は向上していきます。その過程で、人々の意識は「他人ごと」から「自分ごと」へ、さらに「自分たちごと」へと変化していきます。自分一人の命だけでなく、地域のみんなの命を守るために何ができるかを考え、行動することが、災害に強いコミュニティづくりにつながるのです。
小出愛菜さん(陸前高田しみんエネルギー)のお話〈要約〉
私は埼玉県所沢市で生まれ育ち、大学では森林生態学を学びました。中学生の頃から地球温暖化に関心を持ち、将来は気候変動の解決に関わる仕事をしたいと考えていました。大学時代に国際環境NGOでインターンを経験し、気候変動の深刻さや、私たちの豊かな生活が世界のさまざまな地域の犠牲の上に成り立っている現実を知りました。その後、環境活動家のグレタ・トゥーンベリの活動に影響を受け、気候変動への関心を広げるための活動やイベント運営に携わりました。しかし、問題を伝えるだけでなく、具体的な解決策に関わりたいという思いが強くなり、2024年に陸前高田へ移住して陸前高田しみんエネルギーに入社しました。
陸前高田しみんエネルギーは2019年に設立された地域新電力会社です。陸前高田市も出資する公共性の高い企業であり、「『エネルギー自立』を高田暮らしの当たり前に」という理念のもと、電力小売事業、再生可能エネルギー導入促進事業、地域活性化事業を行っています。
従来は電気料金の多くが地域外へ流出していましたが、しみんエネルギーを利用することで、電気料金が地域内で循環し、地域経済の活性化につながります。さらに、その利益の一部を再生可能エネルギー事業や地域づくり活動へ再投資することで、持続可能な地域循環の仕組みを構築しています。
しみんエネルギーは、市内の事業所や家庭、公共施設に電力を供給しています。また、災害公営住宅に設置された太陽光発電設備からの電力買い取りも行っています。特徴的な取り組みとして、津波被災跡地を活用した営農型太陽光発電があります。太陽光パネルの下でワイン用ブドウを栽培し、発電と農業を両立させています。これにより、利用が難しかった土地を有効活用しながら、再生可能エネルギーの普及を進めています。さらに、陸前高田市は環境省の脱炭素先行地域に選定されており、生ごみを活用したメタン発酵事業の実証実験も進めています。メタンガスによるエネルギー生産と液体肥料の活用を通じて、地域資源の循環を目指しています。
しみんエネルギーは、エネルギー事業だけでなく地域交通の支援にも取り組んでいます。その一つが、電気で走る小型バス「モビタ」の運行です。平日は災害公営住宅とスーパー、市役所、郵便局などを結び、高齢者の移動手段として活用されています。利用者は移動だけでなく、ドライバーさんや他の乗客との会話も楽しんでいます。休日には観光客向けの交通手段となり、道の駅を起点にして市街地を案内しながら、震災や復興の歩みを伝える役割も担っています。
私自身も、小水力発電の調査や高校生の職場体験受け入れ、断熱ワークショップなど、さまざまな活動に関わってきました。これらの取り組みはすべて、脱炭素社会の実現と地域づくりにつながっています。今後は、市民の方々との交流拠点づくりや大学との連携、エネルギーを学ぶワークショップの開催などにも取り組む予定です。電気がどこで生まれ、どのように暮らしを支えているのかを市民の方々とともに学び、考える場を広げていきたいと考えています。陸前高田には、地元出身者だけでなく、私のような移住者も含め、多様な人々が集まり、新しい地域づくりに挑戦しています。人口は少ないものの、多彩な活動が生まれている魅力的な地域です。ぜひ現地を訪れ、再生可能エネルギーや地域づくりの現場を実際に見ていただければと思います。


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https://youtu.be/nc8GvLwg-Oo

















