宮城弁でシェークスピア劇を演じる劇団、「シェイクスピア・カンパニー」の新作、『ラーメン屋劇場』を観ました。これまで縁遠く感じていたシェークスピアの世界が、一気に身近になりました。

開演30分ほど前に席につくと、舞台ではすでに役者さんのラーメン作りの演技が始まっている様子。
不思議に思っていると、「お待ちどうさま。ラーメンです!」と店員さんが私たちに「特製ラーメン」のあしらわれた公演パンフを届けてくれるという楽しい演出。ラーメンは次々に運ばれ、開演前にすでに客席は舞台のラーメン店と一体化されていました。
終演後、劇団主宰者で演出家の下館和巳さんにご挨拶させていただきました。久しぶりに羽永さんと再会できたことも嬉しいことでした。

今回、学生たちもご招待いただきました。劇を見終わったばかりの1年生Sさんがひとこと。
「とても美味しいラーメンでした!教養の大切さを感じました。教養があった方が人生がもっと楽しい!」と。

ラーメン店を舞台に、シェークスピア作品の主人公を思わせるお客たちが悲喜こもごもの人生ドラマをさまざまな方言混じりの言葉で語り、店主は、何かが憑依した瞬間、シェークスピア作品の数々の名言をその会話に投げ込むという趣向でした。
「すっか、すねぇがだ、なじょすっぺ」「おおロミオ、あんだはなすでロミオなのっしゃ」といった具合です。
劇団ホームページには、そもそもシェイクスピア劇には多様な地方の言葉が登場するにも関わらず、これまでの日本語訳は全て共通語であり、東北人にはそれがどこかよそよそしく感じられた、とありました。
翻訳文学の読みにくさが気になったことはありましたが、それが共通語であることに違和感を感じたことはなかったため、びっくりする視点でした。
しかし言われてみればその通りで、共通語による翻訳は一つの規格化なのでした。舞台では登場人物のそれぞれが方言混じりに語ることで、一人ひとりの歩みや生活感が滲み出ていたように思いました。
また言葉の扱いとともに、なるほどと味わい深く感じたのは、ラーメン屋という場の設定でした。
日本人の誰もが親しみを感じ、国民食とも言われるラーメンの店で、イギリスの国民的文学であるシェークスピア劇が演じられたことで、英国翻訳文学のシェークスピアが、日常の食卓に上がったのでした。
ここには演出家下館さんの、いかにシェークスピアの魅力をより広く伝え得るかという深い意図とチャレンジ精神が感じられました。
さらに面白いことはこの先のビジョンとして、舞台のラストで、世界の食材を活用した日本人による日本料理の店の開店の夢が語られたことでした。
ここには、東北地方に誰からも愛される木造のぬくもりのある劇場を建設し、東北地方から文化を発信しようという、劇団発足の思いが重ねられているようにも思えました。
確かに今回の劇場ザムザ阿佐ヶ谷の木造風劇場も、作品の魅力を伝え、雰囲気を盛り上げる上で大切な役割を担っていました。
四大悲劇や『ロミオとジュリエット』を下敷きにしつつも、ラストは「起きたことはすべて意味のある、未来につながるよいこと」という温かいメッセージが伝わってきました。
「シェイクスピア・カンパニー」初のオリジナル脚本とのことでしたが、楽しく深く温かく、チャレンジ精神あふれる作品でした。下館さん、素晴らしい機会をいただきありがとうございました。
















