奥能登の珠洲市上黒丸地区洲巻に、渡邊智恵子さんの「のとひとカレッジ」をお訪ねしました。
「のとひとカレッジ」は、珠洲の里海里山を学びのフィールドに、農・林・海の第一次産業と暮らしを地域の実践者から学び、 自然と共にある生き方と地域•世界の未来を探求する学び舎です。渡邊さんの「22世紀に誇れる生き方を、今日から始めよう」という強い信念を原動力に、2025年に動き始めました。
活動拠点となっているのは、洲巻地区に建つ築約350年の古民家・稗田邸。周辺の家々は能登半島地震で大きな被害を受け、2軒を残してすべて解体を余儀なくされたそうです。
稗田邸とともに残ったもう1軒は、やはり風格ある古民家・蔵邸。カレッジの講師でもある蔵緑さんが、周辺の棚田を案内してくださいました。
渡邊さんが、この大きな被害を受けた土地に心を惹かれたきっかけは、山あいに広がる棚田の美しさだったといいます。その風景に心を打たれ、新たな学びの場をここに築こうと、壮大なチャレンジを決意されたとのことでした。
そして蔵さんが土地所有者10名との調整をなさり、カレッジの棚田利用が可能になったそうです。

棚田周辺の道路には亀裂が走り、水源となる溜池も埋まってしまったとのこと。それでも一部の畑ではオーガニックコットンや陸稲、あずきなどの栽培が始まっていました。

渡邊さんは、日本にオーガニックコットンを紹介し、その普及を牽引してきたパイオニアです。ここで収穫したコットンは、渡邊さんが創業されたアバンティが買い取る予定だそうです。
長い年月にわたり、人々が手をかけて守り続けてきた棚田の風景は美しく、自然の懐を借りての生活の営みが伝わってきました。
夕食後、電灯ひとつない棚田に立って夜空を見上げると、満天の星が広がり、あまりの星の多さに星座の形さえ見分けがつかないほどでした。

翌日は渡邊さんに、旧上黒丸小学校の仮設住宅の皆さん、自然と共に暮らす珠洲焼の陶芸家渡辺キャロラインさんをご紹介いただきました。

社会学者の見田宗介は、その瞬間そのものに価値がある生を「コンサマトリー」と呼びました。
棚田で汗を流し、星空を見上げ、夕食を共にしながらの皆さんとの交わりの時間は、何かのためではなく、その時間自体が豊かでした。
のとひとカレッジは、まだ見ぬよりよい未来のための挑戦ですが、その未来の種は、すでに、コンサマトリーな今を豊かに味わう生の中にあるのだと感じました。
20時間の滞在とは思えない密度の濃い時間を過ごさせていただきました。
突然の飛び込み訪問を歓迎してくださった渡邊さん、蔵さん、キャロラインさん、小早川晃治さん、すべての移動をお世話くださった弘前の発酵美人協会三和文子さんに、心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。















