6月19日 みんなの日(教養講座と午後の集い)/「みんなの日」の様子 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

6月19日 みんなの日(教養講座と午後の集い)/「みんなの日」の様子 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

「みんなの日」の様子

6月19日 みんなの日(教養講座と午後の集い)

2021年6月28日

 6月19日午前9時半、小雨の降る中、リビングアカデミ―(以下LA)生、90名が記念講堂に集まった(リモート聴講10名)。緊急事態宣言下ではあるが、万全の感染予防策が取られての開催となった。

 石川リーダーの司会で礼拝。賛美歌122番が流れたあと、恒例の学生によるスピーチ「忘れられない人々」は、自由学園男子部卒業生で2期生の小田泰夫さん。

学部在学中に視覚異常に気づき、順天堂大学病院の中島医師に「角膜斑状変異」と診断され、治療の見込みは立たず、いずれは失明のおそれがあると告げられた。しかし、角膜提供者の善意により、40歳で左目、60歳で右目の移植手術を受ける。眼帯を外したときに見た景色の鮮やかさは忘れられない。

名も知らぬ角膜提供者と中島医師とが自分の忘れられない人々である。

角膜は年齢、病歴に関係なく提供できるので、是非アイバンクに興味を持ってもらいたい。

 教養講座は、作曲家・洗足学園音楽大学非常勤講師である小谷野謙一氏による「作曲家の世界」。

氏は自由学園幼児生活団(幼稚園)出身。ここは幼児期から絶対音を身につけるよう訓練するなど独自の教育で知られ、卒業生に坂本龍一がいる。

バンド活動に明け暮れた高校生活を送ったあと、芸大に入り、作曲家となった。幼児に受けた教育が音楽の道に進む素地を作ったと語る。 

小谷野氏は、「みんなの日」に必ず唄うLA賛歌の作曲者でもある。

ステージ中央に置かれたピアノと、鍵盤や楽譜が映し出されたスクリーンの間をエネルギッシュに動き回りながら、ユーモアたっぷりに語りかける姿に会場全体が引き込まれた。

「音楽とは高度な心理学です。今日はその種明かしをします」

音楽の横糸は音階・メロディ(スケール)、縦糸は和音・響き(ハーモニー)。それらが絶妙に組み合わさると、心を動かす音楽となる。そこに一定の法則性があることは、あまり知られていない。

横糸の音階はピアノの鍵盤で説明する。白鍵と黒鍵は半音間隔で並んでいる。白鍵の間に黒鍵があれば、半音二つ分。白鍵同士が並ぶと半音ひとつとなる。どの音から始まるかで、半音二つ分と一つの並び方が変わる。

‟ド“から始めると長調で明るい雰囲気。‟ラ”からだと、単調で暗い雰囲気だが、それ以外の白鍵からも音階はでき、しっとりとした長調もあるし、救いや希望を感じる短調もある。

縦糸の和音(ハーモニー)は、ひとつずつに独自のキャラがある。安心、胸に迫る感じ、希望、力強さ、憂い・・・。和音は強弱の差があっても人の心に同じ心理的効果をもたらす。それは美味しいものを食べると理屈抜きに「美味しい!」と感じるのに似ている。その和音のキャラを生かして心を動かすように計算するのが作曲。美しい曲のための法則である。

その法則を見事に生かしたのが、「赤いスイートピー」(ユーミン作曲)、「川の流れのように」(見岳章)、「いい日旅立ち」(谷村新司)などで、聞く人の心を動かすしかけがあちこちにある。

作曲家の中で天才と言えるのは、モーツアルト。自分の感覚を信じて定説に反する、当時はありえない和音を使って作曲した。後世のブルースやジャズ、ロックなど新しい音楽の誕生を予見する斬新な音だった。

LA賛歌の作曲を依頼され、作家・水木楊氏(本名・市岡揚一郎=自由学園元理事長、LA前顧問)の詞を見て、氏のLAへの強い思い入れを感じた。とにかく歌いやすいメロディーを心がけて苦労したが、いま思えばあの詞あってこそ出来た曲。詞がいかに大切かを実感した。心に及ぼす効果を計算して作曲したが、詞と合わせて化学反応が起こったと感じる。

講演の最後に、小谷野氏のピアノ伴奏でコーラスクラスが2階ギャラリーからLA賛歌を歌い上げ、学生は心の中で合唱した(感染予防のため声を出して歌えない)

小谷野氏の解説後の賛歌は、ひときわ心に染み渡った。

 講演後、体操クラス・渡邉恭子先生のご指導でその場で出来る生活体操で体をほぐす。

昼食は、パン工房(学園構内にあり、学生たちのためにパンを焼く)のパンが配られ、おしゃべりしたい気持ちを抑えて黙食。

午後1時からは、今年度新たに仲間に加わった6期生の自己紹介があった。

それぞれ短いスピーチだったが、年齢を重ねた分、それぞれのドラマが感じられ、同感したり、同情したり、感心したりで、聞きごたえ十分。13時半過ぎに解散となった。(小林 伸江)

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