「環境文化創造センター」の英文名称Environmental Culture Co-creation CenterのEnvironmental Culture(環境文化)は環境哲学者プラムウッド※1,Co-creation(共創)は経営学者プラハラッド※2が提唱したものを参照しました.
「環境文化」とは,人間の外側に自然環境があるのではなく,人は常に自然とのつながりの中にあり,人のある行為が自分にどのように還ってくるのかという視点から人と環境のつながり全体を考えることを意味します.(民族主義的な単一的な価値に基づく「文化」のように)単眼的な基準による決めつけではなく(複眼的で多様性を重視するケイパビリティ※3指向といいます),時間軸を長くとり,声なきものへもケアすることのできる開かれた文化を発展させたいとの考えが,Environmental Cultureという名称に込められています.
「創造」ということにおいても,人が単独で行うだけではなく,人びとが情報共有をし,相互に関わり合う中から生まれるオープンなイノベーションも大事です.そのような共に創るという意味合いをこめて,「創造」のところをCo-creationとしました.共創のプロセスは,例えば,1) 生産と消費の相互作用による一体化から始まります.それはPrice(価格)がつく一方通行のサプライ・チェーンだけではなく,多様なValue(価値)を視座とする双方向,循環型のバリュー・チェーン※4の世界です.公害問題が典型ですが,一方通行は責任先送りにつながり,循環は責任が付いて回ります.この辺りが共有,共感されますと,2) 共感する者によるコミュニティが形成され,それが3) 一種のブランドにもなります.
以上のプロセスは,実は自由学園のこれまでの一貫教育と整合しています.例えば,市場から材料を購入して,調理・加工して,料理や木工品をつくるだけではなく,自由学園で生活する子どもたちは,その材料をつくる最初のところ,いのちを受け継ぎ育てるところからはじめ,いのちを頂き次世代に渡すという全体の循環プロセスを学んでいます.また,そのようにして気づき(築き)あげたもの(文化)を,仲間と生活し,関係団体と協働する中で実践してきました.
これからもそのような文化を共創しつつ,小さな社会から大きな社会へ,次の200年※5に向けて共進化※6して行きたいと思うのです.
文:杉原弘恭(環境文化創造センター長)
※1 Plumwood, Val (2002) Environmental Culture : The Ecological Crisis of Reason.
※2 Prahalad, C.K. (2004) The Future of Competition: Co-creating Unique Value with Customers.
※3 Sen, A. (2006) Identity and Violence: The Illusion of Destiny
※4 ISO26000 Guidance on Social Responsibility
※5 自由学園創立者の羽仁もと子先生は,「人一人の教育には十代(300年)かかる」といわれた.
※6 Foxon, T.J. (2009) A Coevolutionary Framework for Analysing a Transition to a Sustainable Low Carbon Economy, etc.