10月22日(水)の中等部・高等部・最高学部の3部合同礼拝の時間(8時15分から8時40分)を使い、「南沢キャンパス開設100周年記念合同礼拝」を60周年記念講堂で挙行しました。今年2025年は「南沢キャンパス」と「南沢学園町」が、自由学園創立者羽仁もと子・吉一夫妻の事業として、1925(大正14)年に開かれてからちょうど100周年のメモリアルイヤーです。
当日のプログラムは、1. 更科幸一学園長による礼拝とお話、2. ゲストスピーカーとしてHITOTOWA INC. 代表で学園町在住の荒昌史先生(最高学部非常勤講師)の記念講演、3. 最高学部4年生の丸原歩さん、芳原爽さん(フィールドサイエンスゼミ所属)から在校生向け記念品の紹介、4. 環境文化創造センターの吉川から記念の企画展の紹介、という順で行われました。各プログラムの詳細は以下の通りです。

1 . 更科幸一学園長による礼拝とお話
更科幸一学園長による礼拝とお話は、礼拝(讃美歌:333番、聖書:創世記1章1節〜2章3節)にはじまり、「天地創造と自然との共生」をテーマにお話がありました。以下は礼拝の要約です。
聖書の創世記では、神様は天地を創り、光と闇を分け、6日目に人を創られました。神様はお創りになったすべてをご覧になって「それは極めてよかった」と言われたといいます。自然も人も、本来“よいもの”として生まれた存在です。しかし、その“極めてよかった”世界は今、少しずつ壊れつつあります。四季が美しいといわれる日本も、近年では夏と冬の二季のように感じられることもあります。知らないうちに自然破壊に加担している自分たちの姿を見つめ直すことが大切だと語られました。礼拝の終わりには、「地球と人がどのようにしたら共に生きていけるかを考える時間にしてほしい」との祈りが捧げられました。
続いてのお話では、「地球・人・地域(コミュニティ)とどの様に共生していくのか?」という問いを立て、南沢キャンパスと南沢学園町の100年を中心としたお話がありました。以下はお話の要約です。
冒頭で「学園町と名のつく街はいくつ(ぐらい)あるか」というクイズが出され、正解は15箇所程度と発表され会場が和やかな雰囲気に包まれた。お話では、1921年に目白で自由学園が創立されてまもなく、創立者は「自然の懐の中で子どもたちを育てたい」と南沢の地を選び、1925年に学園を中心とした街づくりを始めた経緯が語られた。それは単なる学校移転ではなく「学園を核とした人々が育つ街づくり」を目指した試みだった。南沢キャンパスと学園町は一体であり、これからも良い関係を築いていく大切さを強調された。最後に、ゲストである荒昌史先生を紹介された。

2. 荒昌史先生(最高学部非常勤講師)の記念講演
荒昌史先生の記念講演は、先生のプロフィールと学園町と関わるようになったきっかけ、学園町の歴史と特徴、未来に向けての課題についてお話しいただきました。以下は講演の要約です。
HITOTOWA INC. の代表の荒昌史先生は、最高学部の非常勤講師として1年生必修の「ネイバーフッドデザイン」を担当し、地域活動や教育に関わる機会を多く持つ。学園町に住み始めて4年になり、引っ越してすぐに初めてのお子様が生まれた際、しののめ茶寮やこっこルームでの地域の人の声かけに助けられ、自治会活動等を通じた人との関わりの大切さを実感したという。荒先生の専門は「ネイバーフッドデザイン」で、地域の共助、つまり「共に助け合える関係性」を育む方法を各地で研究・実践している。講演では、南沢キャンパスを含む学園町の特徴についても触れ、「もともと松林や畑が拡がっていたところに、いかに人が暮らしや町を作っていくかということが問われていたと思うんですね。家に庭を作るのではなく、元々の雑木林や松林の中で人がある意味共生してきた、その共生の仕方が教育の本来的な意味合いだったのではないか」と語りかけられた。学園町は100年前に自由学園創立者の羽仁夫妻によって計画され、自然を生かしながら人と自然が関わる町として作られた。また、フランク・ロイド・ライトの弟子たちが設計した住宅も残され、町の歴史や景観を今に伝えているが、「町並みやこういった歴史的な建築が急激に少なくなっている」と指摘する。「次の100年はどうあるべきか、そこが私たちに今問われている状況。キャンパスも含め道路や樹木を取っても、誰かが手入れをして初めて私達が享受できるものであり、町の風景というものは誰かの営みや関わりによって支えられている。それを単に享受するだけなのか、あるいはそこに能動的に関わっていくのか、その選択を我々はすることができる」と問いかけられた。
最後に生徒・学生に向けて「町の歴史や自然を守り、地域社会を次の世代に受け継ぐために一緒に考えてほしい。何か地域に皆さんがもっと関われるきっかけを作れたらと考えています。これからも一緒に、未来の町を作っていけたらいいなと思っています」と呼びかけられた。また最近の取り組みで、最高学部生が「ネイバーフッドデザイン」の講義や、共生共創プログラムを通じて、HITOTOWA INC. や学園町での地域活動に参加していることも紹介された。
* 学園町の学部生の活動については、学園町自治会発行の『学園町かわら版(115号)』に掲載されていますので、自治会ホームページから是非ご覧ください。https://gakuencho.jp(トップ>コラム>学園町かわら版)


3. 在校生向け記念品の紹介
在校生向け記念品の紹介は、「自由学園キャンパスカード」ついて、ゼミの研究の一環で製作・配布に関わった丸原さん、芳原さんの2人が、今回記念品として在校生全員に配布する旨をアナウンスしました。「自由学園キャンパスカード」は、自由学園が保有する各地のキャンパス・フィールドを紹介するミニパンフレットとして2022年から環境文化創造センターが発行しているもので、今回、新たに南沢キャンパスのカードを製作し、通常版と記念版の2種類をセットにして配布することにしました。実際のカードは礼拝後にクラス単位で配布されました。なお、生活団、初等部、リビングアカデミー(LA)の在校生にも別途配布を行いました。


4. 記念の企画展の案内
記念の企画展の案内は、11月4日から30日までしののめ茶寮2Fを会場に開催する「地形図と空中写真にみる南沢キャンパス周辺の変化〜 明治から令和までの150年 〜」について紹介しました。また企画展の会期に先立ち、各部で3日間程度、ダイジェスト版のサテライト展示を行う旨もアナウンスしました。
* 記念の企画展は会期中どなたでもご覧いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。

文・写真:吉川 慎平(環境文化創造センター長)・写真:小田 幸子(環境文化創造センター次長)















