「DOCOMOMO理事の方々と「建築と教育」を考える」/前学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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前学園長ブログ

「DOCOMOMO理事の方々と「建築と教育」を考える」

2023年10月5日

遠藤新さん設計による自由学園東久留米キャンパスの5つの校舎は、これまで東京都歴史的建造物に選定されていました。

これに加えて2019年には、遠藤新さんの手によるより広い校舎群が国際学術組織DOCOMOMO(ドコモモ)により「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定され、さらに2022年には女子部エリア一帯が東京都有形文化財に指定されました。

これらを受けて自由学園の建築とキャンパス、そして学園町の環境について、DOCOMOMO Japanの理事、平井充さん(メグロ建築研究所代表取締役)、大内田史郎さん(工学院大学教授)、玄田悠大さん(東京大学博士課程後期)の取材にお応えしました。

歴史的な価値のあるこのような建築物を、現代的な教育環境としてどのように活用しているか、またその意義と課題はどこにあるか。さらに学校と地域との歴史とこれからについて。質問にお応えしつつ、あらためて教育環境について考えるよい機会になりました。

世界的建築家であるフランク・ロイド・ライトが「自由な精神を込めた」と語った校舎デザインを、遠藤新が継承発展させたこの東久留米市の校舎群とキャンパス。

統一された美しさを持った校舎と自然環境の中での生活は、無意識のうちに、その人の美しさに対する感覚や自然観を養っています。

加えて自由学園の生徒たちは、学校を自分の家のように掃除し管理するため、自然と「自分たちの学校」という親しみも感じるようになります。自由学園の建築や環境は大きな教育的価値を持っています。

とはいえ、生活や学びの形態の変化と共に学びの環境にも変化が求められます。現在自由学園では、この歴史的校舎を生かしつつ、新しい生活や新しい共同的な学びにふさわしい環境へと、生徒と共に改修を進めています。

また持続可能性や共生社会の実現を目指す学校として、バリアフリー化や校舎の断熱化、エネルギー自給など、今後さらに大きな挑戦すべき課題があります。

インタビューではこれらについてお話しすると共に、建築の専門家の皆さんの視点から、羽仁夫妻の町づくり構想の革新性、自由学園校舎に込められた遠藤新さんの建築思想などについてご教示いただき、とても勉強になりました。皆さん、ありがとうございました。

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ドコモモは、20 世紀建築の重要な潮流である「モダン・ムーブメント」に連なる建築物や環境の歴史的・文化的重要性を記録し、保存を働きかける国際組織です。

1988 年に設立。1990 年にオランダで第 1 回の総会が行われ、以後世界各国で活動が展開されています。近代建築に関するユネスコの世界遺産選定の協力機関でもあります。

ドコモモジャパンは2000 年設立。以降、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」の選定を進めてきました。

自由学園明日館は2003 年 に22番目に、東久留米市の自由学園キャンパス群は2019年に227番目に選定されています。

選定理由は次のように解説されています。

「南沢キャンパスは、遠藤新が羽仁先生との合作だと書き残すほど建学の精神を最も良く表した建築群である。東京都の武蔵野の雑木林の風景が残るひばりヶ丘から学園町までの美しい住宅街は、自由学園南沢キャンパス の存在によって成り立っているといっても過言ではない。」

「キャンパス内の遠藤新による建築が作り出す環境は、地所の自然を捉えて人と自然を仲介する役割を遺憾無く果たしている。これは遠藤新の有機的思想の集大成であり、我が国における学校建築のなかでも一つの理想を実現させた重要な作品群と言える。」

今この学校で生活し学ぶ私たちが、しっかり自覚すべきうれしい評価です。

高橋和也Facebook 2023年10月2日

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