みらいかん竣工に際して 自由学園学園長第46回ブログより/みらいかん お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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みらいかん お知らせ・近況

みらいかん竣工に際して 自由学園学園長第46回ブログより

2017年12月17日

学園長高橋和也のブログ「一生につなぐ毎日」
第46回 自由学園みらいかん竣工に際して 「樹の自由」「新しい自由」

「木は動けないが、花をつけて虫たちを、実をみのらせて鳥や動物たちを、葉を落として微生物や小動物たちを、さらに木陰をつくって人間たち呼び寄せ、そうやって他者の力を借りながら自由に生きている。
木は自分が自由に生きるために、他の生きものたちが自由に生きることのできる環境を作っている。他者の自由があってこそ自分自身も自由でいられる。友人で哲学者の内山節さんはこれを『樹の自由』と呼んでいる。
この『自由学園みらいかん』の建築に使われた木たちは、今、新しい循環に組み入れられた。この建物は大きな自然循環の入り口でもある。」
林業家の速水亨は「自由学園みらいかん」竣工式でこのようにお祝いの言葉を贈ってくださいました。とても印象深い言葉でした。


  • 自由学園みらいかん エントランスホール

  • 自由学園みらいかん 外観

  • 竣工式 2階プレイルームにて

12月16日、自由学園正門前に新しく建てられた「自由学園みらいかん」の竣工式が行われました。お世話になった方々をはじめ関係者約80名が集いました。私たち自由学園と縁の深い左近豊牧師司式の礼拝をもって式を始めることができたことは本当にうれしいことでした。

「自由学園みらいかん」は、木造2階建て、延べ床面積は356平方メートル。もっとも大きな特長は、この建築に使われた梁や柱などの構造材から室内の壁や床、机や椅子にいたるまで、自由学園の生徒、学生たちが半世紀以上の年月をかけて三重県の海山、埼玉県の名栗の植林地で育ててきたヒノキ材が使われていることです。
「みらいかん」は主に3歳から12歳の子どもたちが利用する子どものための建物です。木のぬくもりと美しさにあふれたこの建物で、子どもたちが安心して楽しく過ごし、自然と共に生き、仲間と共に生きるよい感覚を身につけて欲しいと願っています。

1950年、創立者の羽仁吉一先生は第1回植林に出発する生徒たちに「30年後、この杉の木を使って新しい校舎を作るのだ。これが自由学園の教育だ。心を込めて行って来なさい」と励ましの言葉をかけました。その壮大な夢が約70年を経て実現しました。


  • 海山植林地の小屋周辺

  • 1966年 海山で最初に植林をしたクラス

  • 植林地での作業

設計は建築家の松井亮氏。フランク・ロイド・ライトや遠藤新の意匠を活かしつつ、生徒の育てた木で未来を生きる子どもたちを育む建物をというコンセプトを受け止め、植林地にも足を運び、森の空気と自然のぬくもり、そこに差し込む光が実感できる美しい建物をデザインして下さいました。
竣工式では木を切り出し、製材し、建物が建ち上がるまでの様子を写真と共に解説していただくこともできました。

「人間はときに自己の自由を手にするために、他者の自由を犠牲にさえするのに、木は他者の自由があってこそ自分自身も自由でいられるのである。自由を、日本の昔からの言葉のつかい方に従って、自在であることと言い直せば、木が自在な一生を生きるためには、自在に他者を呼び寄せ、自在に他者とともに生きていく世界が必要なはずである。」
内山節さんの『自由論』の「『樹の自由』を考えながら」という文章の一節です。
将来的には、「みらいかん」を地域や社会に開かれた場として発展させていきたいと考えていますが、いつかここに内山節さんをお招きして、「樹の自由」「新しい自由」について学ぶ集まりをもちたいと思います。

設計及び建築にあたってくださった松井亮建築都市設計事務所、桑子建築設計事務所、株式会社佐藤秀の皆様、植林活動の実施、継続に当たって長くお世話になりました柏木正之様、速水林業の速水勉様・亨様、紀北町、森林組合おわせの皆様に心より感謝を申し上げます。
また植林活動に汗を流した卒業生、活動をお支え下さったすべての皆様に感謝と共に竣工のご報告を申し上げます。どうぞご来校の際には皆様の労働の結実である「みらいかん」に足をお運びください。

2017年12月17日 高橋和也(自由学園学園長)

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