3月24日(金)「みんなの日」 教養講座と修業式/「みんなの日」の様子 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

3月24日(金)「みんなの日」 教養講座と修業式/「みんなの日」の様子 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

「みんなの日」の様子

3月24日(金)「みんなの日」 教養講座と修業式

2023年4月27日

3月24日(金)の午前中は3月の「みんなの日」の教養講座を、また午後には2022年度修業式を記念講堂で行った。校内の桜はちょうど満開となり、あたたかな一日となった。平日であったためご都合がつかない方もあってLA生113名が出席した。

はじめに、石川リーダーの司会で礼拝が行われ、讃美歌405番「神と共にいまして」をコロナ感染を考慮して小声で賛美した。  

<「忘れられない人々」1期生・斎藤勝子さん>

「忘れられない人々」は、1期生の斎藤勝子さんが、コーラスをする中で出会った郡司博さんについてお話しされた。

入社された会社の女性社員7名で食事をしたりする中で、その中の1人から12~13名のコーラスに誘われたことがきっかっけで、その後新宿の第9を歌う会に参加するようになった。指揮者・郡司博さんの厳しい指導を受けて舞台に立つことができた。郡司さんの合唱団でハイドンのオラトリオ『四季』を歌うということで、新たにその合唱団に入会し、20年以上にわたり毎回2時間以上の厳しい練習に参加し、天地創造、マタイ受難曲、ロ短調ミサ曲、3大レクイエムなどを経験した。その後、日本ボランティア協会の資金を集めるための年末のメサイアのチャリティーコンサート(合唱指導は郡司さん)に参加するようになり、メサイアは楽しいので、徐々にメサイア1本に絞るようになった。コンサート後には、外国から招かれた指揮者、ソリストなどと一緒の打ち上げがあり、いろいろな方との出会いと楽しい交流を持つことができた。それも長い間の厳しい練習があってのことだったと思う。

<教養講座『スローフードを再確認する』島村菜津氏>要約

今年度最後の教養講座は、島村菜津氏(ノンフィクション作家)に『スローフードを再確認する』と題して、お話をしていただいた。

1)スローフードとは

ふと気がつくと、私たちの食卓には、作り手の顔が見えない食品が並びがちだ。けれど、そんな現状を変えていこうというムーブメントも着々と育まれている。イタリアで1986年に始まった「スローフード運動」は、マクドナルドがローマに進出したことがきっかけで、作り手とのつながりを大切にし、「食べること」のあり方をゆっくり見直そうという運動だ。

EU統合によって物流が加速されることで大量生産・大量消費・大量廃棄の仕組みが流入する中で始まった、それぞれの土地の食の文化・多様性を大切にする運動である。

もう一つの要因は、1986年にイタリアでメタノール入りワインで19人が死亡、15人が失明するという事件が起きたことが引き金になって起きた量から質への転換の流れである。

2000年に書いた『スローフードな人生! イタリアの食卓から』(新潮社)によって、スローフードという言葉が日本にも浸透していった。

2)旅を楽しみながら、それぞれの場所の食文化を知る。

1.イタリア編

①トスカーナ州の小さな集落、チェターラの赤玉ねぎ:13世紀の資料にも登場する伝統野菜でありながら、中国から輸入される安い玉ねぎの影響を受けて、生産者が激減してしまったが、これを復活させた。

②ロンバルディア州テーリオのそば:アルプス山脈の同村では、チーズを練り込んだそば粉のパスタが有名だが、98%まで中国産そば粉が占めるようになり、その復活を試みている。

③サルデーニャ州マグロ漁:900年以上、続いてきた伝統的な追い込みのマグロ漁マッタンツァが細々と残っている。大きくならないうちに地中海の真ん中で畜養マグロのために獲られてしまうことで、この伝統漁は風前の灯、シチリア州ではほぼ消えた。

④カンパーニャ州、ヴェスヴィオ山麓の在来トマト:名産品のピエンノロトマトは2週間くらいかけて段々に熟すので収穫に手間がかかる。収穫されたトマトは、軒先などに吊るして保存することで糖度が増して美味しくなる。今では百軒以上に復活。

⑤カンパーニャ州アマルフィ海岸の棚田のレモン:レモン街道とも呼ばれるこの海岸線は、切り立った断崖とエメラルドの海が複雑に入り組み、大変美しい。レモンの段畑は断崖の土壌流出を抑える役割を果たしているが、効率が悪いため後継者の不足に直面。

⑥アブルッツォ州サント・ステファノ・ディ・セッサニオのレンズ豆:一度も絶滅したことのないオオカミが棲息する環境は国立公園として守られ、高度1200~1800mで中世から輪作でレンズ豆を生産している。国立公園内では羊を放牧、手絞りの光景は幻と化しつつある。

2.インド編

北部デーラドゥーンで、ヴァンダナ・シヴァさん(インドの哲学者、環境活動家)は、1987年から種子保全運動を開始した。ヴァンダナさんたちが営む農場では、4000品種に及ぶ米、麦、そして雑穀、豆、野菜、香辛料などを在来種子で栽培。デリーの消費者たちと提携しながら、その多様性を大切に守っている。長い間、受け継がれてきた種の中にこそ、どんな災害にあっても生き延びられる情報が詰まっている。

3.南米編

アンデス地方には、4000種に及ぶ多様なイモ類があり、初夏には、村ごとに民族衣装を着た女性がイモを選別する光景が見られる。かつてアイルランドでわずか2~3種類のジャガイモを主食にしていたために、そのイモに病気が流行ったときに250万人とも言われる人々が餓死した。この危機を救ったのは、原産地で探した病気に強い品種だった。効率だけを考えて、品種の数を減らして大きく育つ、流通に向くイモだけを残すことの大いなる反省がそこにある。さらに貧しいと言われてきたアンデスの多様な種類のイモを守る暮らしが、人類の飢餓を救うのである。

4.アフリカ篇

西アフリカのサバンナ地方では、国際的ブランドのマギー社のブイヨンが入り込むことで豆を煮て発酵させたスンバラという地元の伝統調味料が失われようとしている。旅行ガイドで、郷土料理が食べられると書かれた店を探して出かけたが、そこにもマギー社の看板が掲げられていた。また難民の流入による焼き畑や森林火災などで森が縮小したギニアでは、長く薬として愛飲されてきたシンティンの原料である大切な木の実も危機的状況にある。5,中米編

エクアドルの高原バナナの開発に押される森と、森と共存する暮らしを守るために、そこに自生するコーヒーを生活の糧としている人々を、辻信一さんや学生たちと訪ねた。日本では、フェアトレード・有機コーヒーを販売する福岡県の「ウインドファーム」でこのコーヒーを扱い、応援している。国分寺にある「カフェスロー」で購入、また飲むことができる。

5.日本編

大切にしていきたい各地の食文化と風景

①岐阜県恵那市山岡町の細寒天 ②青森県下北半島の菜種油 ③愛知県岡崎市のまるや八丁味噌 ④石川県輪島市の天然輪島塗の器 ⑤山形県置賜地域の雪菜のふすべ漬け⑥新潟県村上市山熊田の焼き畑による赤かぶ漬け ⑦北海道白老のアイヌに伝わる鮭を加工して作るサッチェプ ⑧かつて公害が起こった熊本県水俣市の有機のお茶づくりや甘夏 ⑨秋田県男鹿半島のしょっつる鍋 ⑩ 北海道南かやベの海中に炭素を貯留する養殖ワカメ ⑩北海道襟裳岬の放牧の短角牛(赤牛) ⑪北海道新得共働学舎(代表は卒業生の宮嶋望さん)のブラウンスイス牛のミルクから作るチーズ ⑫千葉県いすみ市では市内の学校給食のご飯を100%地元の有機米に切り替えた。各地で同じ活動が拡がろうとしている。昨年、自由学園でもいすみ市の有機米を月1回導入することが始まった。(「生活と自治」4月号/生活クラブ・参照)

3)まとめ

私たちの命をつなぐのは、日々の食である。私たちと家族、友達、地域社会、ふるさと、そして自然、地球、その関係の真ん中にある食というものが少しずつ変わり、これがつなぐ関係が歪んできたことによって、多くの問題が発生している。環境問題は、その際たるものだ。いま私たちに、しかも楽しみながらできることは、「日々の食卓をできるところから考えていく」こと。それによって、私たちが子どもたちに残す次の社会、次の世界を変えることができる。そんなスローフード運動の主体は、専門家や有識者だけでなく、畑や田で、海で、台所で、店頭で、そして日々の食卓で、毎日、食と向き合う皆さんご自身である。

 

<諸報告>

①個人情報、写真掲載等についてのご承諾書の更新、入構書の写真更新受付について

②来年度の委員選出について(今年度委員は5月まで継続する)

③定員に不足している来年度選択クラスの再募集について

午前の部終了後、体操クラスの体操に合わせて、全員で座った姿勢で生活体操を行う。

 

<昼食> 

昼食は、手作りのお弁当を記念講堂で黙食。メニューは、ご飯、甘塩鮭、さつま芋とリンゴの重ね煮、小松菜・人参・もやしののり酢あえ、ふりかけ(削り節・ごま)。

 

<修業式>

13時30分より、2022年度修業式が行われた。

はじめに、石川リーダーから、コロナ下で各自の責任を果たして下さったことへの感謝、LA生が常に進歩を目指す姿勢から励まされたこと、ウクライナ支援やキワニスドール作りなど世の中のためになる活動、共生学への協力など次世代に繋ぐ働きなどについてこの1年を振り返る話があった。

続いて、修業の印「ゆかり証」を代表の各家族長に高橋和也学園長から手渡され、その後、ウクライナ支援への感謝、共生学を通して異年齢の繋がりから感じる可能性、一生学び続けることの大切さなどの話があった。

LA協力員会より湯本委員長からLA生に支えていただいたことへの感謝が述べられ、最後にリビングアカデミー賛歌を歌い、修業式が終了。その後、集合写真を撮影した。

 

<感謝会>

14時45分から、最高学部食堂にて、LA協力員会主催の感謝会が開催された。

出席してくださった講師の方々、リビングアカデミースタッフに、1年の感謝をこめてアート&クラフトグループ作成の手作りカードが贈られた。続いて、講師の方々からこの1年を振り返り、また来年度を前にしての思いを話していただいた。

 

 

雨が降りだしたため、予定されていた故市岡揚一郎氏(LA創設者)記念樹の植樹は延期することとなった。

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