環境文化創造センターでは,全学の教育・研究・マネジメントに供することを目的に,高精度の気象観測システムを南沢キャンパスに整備しました.これは株式会社フィールドプロとの「産学連携による共同研究包括協定」に基づくプロジェクトの一環で,2019年10月末に各種観測機器を最高学部棟屋上に設置し,12月より気温,湿度,雨量,風向,風速,気圧の6要素について連続観測を開始しています.これらの観測に使用する各種センサーは,全て「気象庁検定」を取得し,管轄の東京管区気象台(気象庁)に設置届出を行なっています.
今年度からは,定期的に気象観測におけるトピックを本サイト上でもお知らせして参ります.南沢キャンパスの季節の移ろいを身近に感じていただければ幸いです.
【2020年4・5月の様子】
4月は,月間の平均気温12.5℃,最低気温4.6℃(6日),最高気温24.1℃(26,30日),月間の降水量は206.5mmでした.2日は冬型の気圧配置により全国的に風が強まり南沢でも最大瞬間風速21.4m/秒(風向:西南西)を記録しました(当月最大).また13日は本州の南を通過した低気圧の影響により全国的に荒れ模様となり,南沢でも日降水量89.5mmを記録しました.
5月は,月間の平均気温19.3℃,最低気温9.4℃(8日),最高気温29.4℃(11日),月間の降水量は53.5mmでした.1日は3月22日以来今年2度目となる最高気温が25℃を超える夏日となり,5月は日数にして18日の夏日を記録しました.また7日は朝から日中にかけて風が強まり,最大瞬間風速17.4m/秒(風向:西)を記録しました(当月最大).この日の未明の湿度は97%でしたが昼過ぎには25%まで低下し,翌8日には最小湿度21%(当月最小)を記録しました.
南沢キャンパスは新緑や春の花々が咲き誇る時期から緑濃き時期を迎えています.



データ出典:自由学園水文・気象観測システム
*データは速報値のため今後修正される場合があります
自由学園南沢キャンパス(最高学部棟)屋上露場
北緯35度45分8秒、東経139度32分17秒 標高:約73m(4階建ビル屋上)
*上記数値は目安です
参考:tenki.jp 日本気象協会
【気象観測機器について・第1回:(1)温度,(2)湿度】
自由学園水文・気象観測所に設置されている各種観測機器についてシリーズで詳しく紹介します.第1回は身近な温度(気温)と湿度を測るセンサーです.
温度計と湿度計は、それぞれ電気式のものを最高学部棟屋上露場に設置しています.温度センサーには白金測温抵抗体を用いたフィールドプロ社製TPT100(気象庁検定付き)を,湿度センサーにはフィンランドのヴァイサラ社製HMP110(気象庁検定付き)を用いています(写真2).
センサーは「強制通風筒」と呼ばれる直射日光を遮るための円筒状のシェルター(プラスチックと金属製)にそれぞれ格納されており,内部のセンサーには送風ファンの力で取り込まれた外気が常時当てられています(写真1).以前は木製の百葉箱が使われていましたが,現在ではこちらが主流になっています.センサーを設置する高さは気象庁のガイドラインで地表面から1.5mが目安となっており,当観測所は屋上のため床面から1.5mの高さとしています.現在,夏場の暑熱対策のため,芝生による屋上緑化を検討中です.
学内では,女子部露場と20m程度の比高がある最高学部棟屋上露場との温度差がどのくらいあるのか?といったテーマへの関心も高まっています.


温度観測について詳しくはこちら(フールドプロ社コラム)
湿度観測について詳しくはこちら(フールドプロ社コラム)
【研究】 高精度の気象観測システムの運用開始と産学連携による共同研究包括協定の締結
文・写真:吉川慎平(環境文化創造センター・最高学部)