【研究】校内立野川に繁茂する外来種の早期・選択的防除の試み/環境文化創造センター - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

【研究】校内立野川に繁茂する外来種の早期・選択的防除の試み/環境文化創造センター - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

環境文化創造センター

【研究】校内立野川に繁茂する外来種の早期・選択的防除の試み

2022年5月8日

環境文化創造センターでは,短期・中期・長期の視座で校内の「生物多様性の保全」についての検討を課題としています.ここでの生物多様性とは,単に種や遺伝子の多様性に留まらず,生態系や生物が生息する場の多様性も含めたものです.

日々,各部の活動を通じてこうした保全が図られつつありますが,直面する課題として,校内を流れる湧水河川の立野川を回廊とした外来種の侵入があります.校内の立野川は水路管理者の東久留米市との協議のもと,学園で草刈りや除塵などの日常管理を担当し,男子部高等科の生徒が担って来ました.その中でも新天地(実習圃場)を流れる区間は,護岸を設けず自然状態での保全を目指しており,ナガエミクリやセキショウ、ミゾソバなどに代表される湧水性の植物が見られます.その一方で,上下流区間と同様に外来種の繁茂が顕著になって来ています.

中でも環境省の生態系被害防止外来種リストでは緊急対策外来種,かつ特定外来生物に指定(最も重いグレード)されている「オオカワヂシャ」や,重点対策外来種に指定されている「キショウブ」が繁茂しています.オオカワヂシャはオオバコ科の多年草で,自然分布はヨーロッパ~アジア北部とされ,在来種との競合,遺伝的撹乱が懸念されています.キショウブはアヤメ科の多年草で,自然分布はヨーロッパ~西アジアとされ,在来種,畑作物との競合,在来のアヤメ属との交雑が懸念されています(参考:国立環境研究所 侵入生物データベース).これまでも生徒・学生の手により防除を進めて来ましたが,コロナ渦での休校措置などの間にその繁殖力の強さから拡大して来ています.

 

開花したオオカワヂシャ(落合川)

 

開花したキショウブ(立野川)

 

オオカワヂシャについては,従来,在来種のカワヂシャとの見分けを容易にするため,草丈がある程度伸びてから除去していましたが非常に不効率でした.そこで,効率的な防除のため今年は2月下旬から芽と根の掻き取りに着手し,毎週区間を見回り4回程度防除を行い,約25kgを処理しました.オオカワヂシャは植物体が残るとクローン繁殖するため,切れ端等が流下しないよう細心の注意を払いました.現在のところ,ほとんど成長を許していない状態を保てています.過去,同区間での処理量は290kg(2011年夏頃)という記録もあり,単純な比較ですが大幅に省力化できたといえます.なお,外来生物法に基づき,生物体は種子を持たない段階で,現場で密閉・枯死させ,一般廃棄物として処分するなど適正処理しています.キショウブについても可能な範囲で芽と根茎の掻き取りを行いました.

 

越冬する2月下旬頃のオオカワヂシャ(立野川)

 

一方で,環境省のリストでもオオカワヂシャの定着段階は「分布拡大期〜まん延」となっている通り,立野川の上下流や周辺の落合川や黒目川でも繁茂しており,特に上流区間にも分布するため,学園区間のみを防除しても抜本的な解決にはなりません.中長期的に地域の河川環境をどう保全していくは,行政・地域全体での議論が必要と感じています.

 

文・写真:吉川 慎平(環境文化創造センター長・最高学部教員)

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