【社会】「気候危機」を社会に向けて発信する/環境文化創造センター - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

【社会】「気候危機」を社会に向けて発信する/環境文化創造センター - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

環境文化創造センター

【社会】「気候危機」を社会に向けて発信する

2022年7月12日

環境文化創造センター(以下Eセンター)では、気候変動問題を世界が直面する緊急の課題として捉えて、学内外でそのことを伝えていくことに力を入れている。

これまで社会に向けての発信として、『気候変動の時代に生きる』(山川出版社、2019年)、『気候変動から世界をまもる30の方法』(合同出版、2021年)の執筆に協力し、自由学園で行われている気候変動教育について紹介してきた。

『世界の気候変動かるた』出版記念オンラインイベントに協力

7月9日(土)19:00~20:30に開催された国際環境NGO FoE Japanと合同出版の共催による「気候かるた」で遊ぼう!出版記念オンラインイベントに、Eセンター次長の鈴木が登壇した。

7月13日に刊行される『世界の気候変動かるた』は国際環境NGO FoE Japanが、気候変動に関する動物への被害、災害、しくみについて、小学生でも遊びながら学べることを目指して、親しみやすいトピックをかるたにして製作したもので、合同出版から刊行される。

 

 

1)気候危機の現状と気候正義 国際環境NGO FoE Japan

イベントの前半は、この「かるた」を製作されたFoE Japanのお二人から、どのような思いを込めてこの「かるた」を作ったかについてお話しがあった。

現在進行する温暖化は人為的な原因によることが科学的根拠に基づいて明らかになり、産業革命以降地球全体の平均気温は1.1℃上昇、世界のあちこちでは既に様々な災害が発生している。今後の気温上昇を1.5度以内に抑えることが求められている。

気候変動問題には、温室効果ガスを主に排出してきた先進国とその被害を受けやすい途上国の間の不平等、同じように国内での少数の富裕層とそれ以外の人たちの間の不平等、また温室効果ガスを排出してきたこれまでの世代とこれからその被害を受けることになる次世代の間の不平等の3つの不平等が存在する。これらの不平等を解決し、「気候正義」を実現することについても、この「かるた」に著している。

2)アクションに繋がる主体的・対話的な学び 鈴木康平(Eセンター次長)

イベントの後半は、鈴木(Eセンター次長)が「アクションに繋がる主体的・対話的な学び」という題でお話しした。

①アフタースクールでの実践例の紹介

このイベントに先立って、7月6日(水)の夕方にアフタースクールの渡邉武俊(アフタースクール責任者)がサステナ部の子どもたちとこの「かるた」を使って遊んだ。「かるた」の読み札には、読み札の文章の解説も書かれていて、絵札を取った子どもにその解説を読んでもらい、それについての会話をはさみながら楽しく遊ぶことができた。みんなで「かるた」をしている様子を撮影し、5分間に編集した動画をはじめに紹介した。

②「探究学習」の入り口としての活用

小学校、中学校、高等学校で順次スタートした新学習指導要領では、新しく「探究学習」が導入された。この探究学習では、特に主体的・対話的な学びを大切にして、これまで実現出来なかった深い学びの実現を目指している。アフタースクールの子どもたちの様子から、「かるた」をしながら会話がひろがっていくことが明らかになり、「かるた」で遊ぶことを通して、主体的・対話的な学びのための素地が形成されることがわかった。

気候変動をテーマとした探究学習については、「気候変動を環境問題という分野を超えて、格差や不平等などの社会問題や自分たちのライフスタイルなどの生活の問題にも広げて学ぶ」「情報の収集・整理で終わらずに、何がしかのアクションに繋げる」「問題を自分の問題として捉え、自分のミッションや人生の目標を発見するような学びを実現する」ことを期待する。

③自由学園で実践している気候変動に対するアクションの紹介

気候危機の優先課題として、温室効果ガス排出量の削減がある。化石燃料依存から脱却して再生可能エネルギーへ転換するために2018年に再生可能エネルギーの電源比率の高い電力会社に契約を変更した。また食べものを輸送するために使われる大量のエネルギーを削減するために、校内の畑で生産を行うと共に、地元の食材を購入するなど地産地消に励んでいる。一方で、気候危機に対する補助的な対策として、70年前より二酸化炭素を吸収する森林づくりを続けている。

昨年度、「探究学習」の時間に高等科3年生の中に気候危機に関心をもって調べる中で、土壌中の炭素量の貯留量を増やす不耕起で作物を育てる環境再生型農業、リジェネラティブオーガニック農法へと発展させた生徒たちがいた。彼らは4月に最高学部(大学部)に進学してからも、そのことを自主研究として継続したいということで、自主研究「リジェネラティブオーガニック農法への挑戦」グループが発足して不耕起による和綿栽培に取り組んでいる。

この度は、社会に向けて気候危機について発信する機会として、自由学園における実践の紹介をさせていただき、FoE Japan並びに合同出版の皆さんにこの場を借りて感謝を申し上げる。

 

文・写真:鈴木康平(環境文化創造センター次長・最高学部特任教授)

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