「久しぶりに能・狂言を堪能」/前学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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前学園長ブログ

「久しぶりに能・狂言を堪能」

2023年10月12日

矢来能楽堂での観世九皐会十月定例会。人間国宝・野村萬さんの狂言「酢薑」と新井麻衣子さんがシテ役で翁・龍神を演じる能「春日龍神」を鑑賞しました。日本人がつくり上げてきた洗練された文化の深み、豊かさを堪能。その世界に魅了されました。

国語教師でありながら、この頃まったく触れることがなくなっていた伝統芸能は、私にとっては気になりつつも異世界となっていました。

しかし今回久しぶりに能と狂言を体感して、実は我々の身体表現・言語表現としての伝統であるという点において、またそのテーマの普遍性において、この世界が実に親しい世界であることを感じました。この誇るべき世界のことをもっと知りたいと思いました。

狂言は、同じ舞台に立つ萬さん、万蔵さん、万之丞さんの、親子三代の共演の姿に親子相伝の伝統芸能の厚みを感じました。人間国宝で93歳の野村萬さんの湧き上がるような笑いの素晴らしさに引き込まれ、軽やかな気分になりました。

能「春日龍神」の構成は、釈尊の教えの源流を辿る入唐渡天(中国・インドへの旅)を願う明恵上人(ワキ)と、春日明神の命を受けその願いを思いとどまらせようと説得する翁(前シテ)、龍神(後シテ)が掛け合い、最後に上人は旅を取りやめ、龍神は池に姿を消すというものです。

前シテの翁の抑制された緊張感、龍神となり地響きの中に現れ勇ましく舞う後シテの圧倒的な迫力。双方が互いを生かし合う見応えのある舞台でした。

中入前、入唐渡天を断念させた翁の表情を横から見る場面がありましたが、それまでの悲壮とも感じられる表情が、嬉しげに見え、びっくりしました。

シテ・ワキ役の謡と所作、低音でリズミカルな心地よい地謡、無意識領域に差し込んでくるかのような笛、小鼓、大鼓、太鼓の響き。能の演出は簡素と言われますが、これ以上不用と思える表現の豊かさを感じました。

今回は謡の内容を理解した上でのぞみ、面白さを味わうことができました。以前より観たいと思っていた複式夢幻能「実盛」「敦盛」「井筒」などにも挑戦したいと思いました。

今回初めて矢来能楽堂に足を運び、神楽坂駅から数分のビルの間にこのような能楽堂が存在することにも驚きました。おそらく日本各地でこのような能楽堂によって、数百年続く日本の伝統芸能が今に伝えられて来たのだと想像します。

とてもよい機会でした。お誘いくださった新井さん、ありがとうございました。

高橋和也Facebook 2023年10月9日

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