「子どもを守る会会長増山先生と」/前学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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前学園長ブログ

「子どもを守る会会長増山先生と」

2023年11月17日

日本子どもを守る会会長増山均先生にお会いし、じっくりお話しする機会をいただきました。

児童は、人として尊ばれる。
児童は、社会の一員として重んぜられる。
児童は、よい環境の中で育てられる。
児童憲章前文1951年

国連での児童の権利宣言制定の8年前、日本では国を挙げて子どもの人権尊重をうたう先進的な児童憲章が制定されました。

しかしその後70年、少子化社会でありながら子どもたちは困難の中にあり、昨年1年間にみずから命を絶った小中学生、高校生は514人。統計がある1980年以降、過去最多という現実を示しています。

増山先生は、教育、福祉、子どもの人権と文化の問題など、広い視点から子どもと子どもを取り巻く社会や環境の研究を進めてこられ、日本子どもを守る会会長ほか、日本学童保育学会代表理事、子どもの権利条約市民NGOの会共同代表、早稲田大学名誉教授などをつとめ、長く子どもをめぐる社会的環境の改善に取り組んでおられます。

児童憲章制定から70周年を迎えた2021年には『子どもの尊さと子ども期の保障 コロナに向き合う知恵』を出版。

戦後から現在に至る子どもを守る活動と理論の展開、そして今後への課題、希望が示された内容の濃い一冊でした。繰り返し読み、ぜひお話しを伺いたいと思っていました。


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この日、話題は多岐にわたり、子どもを見る根本の立場での深いつながりを感じ、多くの示唆、大きな力をいただきました。

その中で印象深い言葉の1つが「子どもにとって大切なことは、あてにされるということ。」

子どもたちが生き生きと活動し、よい社会をつくる主体として育っていく上で大切なことは、そこに自分の出番や役割があること、つまり「あてにされること」だということです。

しかし便利になった今のこの生活で、子どもたちの力は当てにされなくなりました。

この「あてにされること」、自由学園では「責任による教育」と言い、教育の中心に置き大切にしています。

自由学園は、日常的に児童、生徒、学生の自治と協働を重んじ、それぞれが年齢に応じて、学校の掃除やさまざまな生活運営、生活のルールづくり、さらには図書館運営や学校全体の樹木や庭園管理などの役割を担っています。

たとえ小さな役割や出番であっても、皆に「あてにされる」と同時に皆を「あてにする」という生活の中で、協力してその責任を果たし、互いに支え合って成り立つ社会の仕組みを体感。同時に自分もその一端を担う大切な1人であるという経験を重ねます。そしてその中で、自尊感情や協力、感謝の心が自然に育てられていきます。

先生とお話しし、子どもを生かす場となるように、学校も社会も、もっともっと、子どもを信じ、「あてにする」ゆとりを持ちたいと思いました。

このほか、子どもの権利条約第31条が示す子どもの遊び・余白・文化の権利のこと、エデュケーションとアニマシオンのこと、自治とエージェンシーのこと、学校という枠組みからの子どもの解放、そして地域の役割などなど、話は尽きませんでした。

増山先生には来学期、自由学園の教職員との勉強会をお引き受けいただきました。今から楽しみです。

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日本子どもを守る会は、羽仁吉一・もと子夫妻の長女羽仁説子さんも設立に関わり、2代目会長を務め、会の発展への貢献が高く評価されています。

設立は1952年。戦後直後、民主主義の実現を目指していた日本社会が、朝鮮戦争を機に再軍備化の「逆コース」へと舵を切るその真っ只中でのことです。逆コースに合わせて、平和主義の教育も転換。国を愛し戦うことができる人を育てる「道徳」教育が導入されています。

日本子どもを守る会はその逆風の中に成立し、一貫して日本国憲法と児童憲章・国連子どもの権利条約の精神に則り、子どものしあわせと人権を守る、さまざまな運動に取り組んでいます。

1964年から毎年『子ども白書』を刊行し、子どもの権利の視点から最新の話題を取り上げ、紹介しています。

現在この編集に自由学園教員や学部生が参加していることはとてもうれしいことです。

高橋和也Facebook 2023年11月7日

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