羽仁もと子生誕150年記念ギャラリー展トークイベントに合わせ、自由学園女子部卒業生であり千葉学園校長岡本潤子さんにご案内いただき、八戸の生家跡、南宗寺の松岡家墓所など、もと子ゆかりの場所を訪ねました。
松岡(羽仁)もと子は明治6(1873)年生まれ。生家跡は今はお寿司屋さん。かつて下級武士の住まいがあったあたりは赤提灯が並ぶ賑やかな一角になっています。
祖父忠隆はもと子、妹くら、弟正男、八郎の4人に、明治のこの時代に男女の別なく東京での教育を受けさせ、正男と八郎はさらにアメリカに留学しています。
その後もと子は女性新聞記者を経て出版社を起こし、八郎はデイリー東北社長、正男は福沢諭吉が起した時事新報社長等を務めるなど、それぞれジャーナリズムの世界で活躍。さらにもと子は自由学園を、くらは千葉学園の前身八戸女塾を創設しています。
これら兄弟姉妹4人の目を見張る活躍は、開明的な思想を持っていた下級士族の祖父忠隆の影響によるものと言われており、今回もと子の記念の年にルーツである松岡家のお墓をお参りできたことはうれしいことでした。
忠隆と共に松岡家の人々に影響を与えた親戚筋の人物として源晟(みなもとあきら)の存在も指摘されています。晟はもと子とはふた回り年が離れた1850年生まれ。自由民権家、政治家、八戸で最初にクリスチャンになった人物としても知られています。この辺りにも興味がわきました。
お墓を訪ねた後には、千葉学園に移動。デイリー東北の皆さんを交え、千葉学園幼稚園70周年を記念してくらともと子が始めた教育の「歴史と現在」をテーマに、岡本さんとの座談会を行いました。
千葉学園幼稚園の子どもたちは、羽仁もと子の『子供読本 いろはカルタ』を誦じているとのこと。岡本さんとのお話しの端々から、もと子の思想を継承する熱意が伝わってきました。
20時間ほどの八戸滞在でしたが岡本さんのおかげで中身の濃い時間となりました。八戸友の会の熊谷さん、青森の武田さん、また八戸ブックセンターの皆さん、アソビスの佐々木さんとお話しできたこともうれしいことでした。
羽仁もと子は生涯と思想が密接に繋がっているタイプの思想家です。雪のちらつく寒い冬の日の八戸を体感できたことは、もと子の著作と思想を味わう上で貴重な機会となりました。
高橋和也Facebook 2024年2月25日