今週の1冊『台湾漫遊鉄道のふたり』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

今週の1冊『台湾漫遊鉄道のふたり』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

図書館 お知らせ・近況

今週の1冊『台湾漫遊鉄道のふたり』

2024年4月22日

2024年4月22
『台湾漫遊鉄道のふたり』 楊双子著 中央公論新社
昭和13(1938)年、日本の統治下にあった台湾を舞台に、日本(内地)の女性小説家・青山千鶴子と、現地で通訳を務めた王千鶴の物語です。訳者あとがきの表現を借りれば「美食×鉄道旅×百合」小説。特に「美食」については圧巻で、台湾の食文化をこれでもか!というくらいに文字で経験できます。というのも、主人公の千鶴子と千鶴は驚くほど大食漢で、食いしん坊。特に千鶴子は当時としては大柄な、160センチ超えの身長で、常にお腹が減っています。彼女が自著の出版に関連した講演会を台湾各地で行いながら、その旅の先々で土地のおいしいものを食べつくします。千鶴は千鶴子のどんな無茶ぶりにも冷静に対応し、その希望を次々とかなえていきます。中でも圧巻は、10人分12品からなるコース料理を千鶴子と千鶴、2人でたいらげる場面。読んでいるこちらもお腹いっぱいになりそうでした。
さて、この物語には、ノンフィクションなのではないか?と思ってしまう要素が多いのですが、訳者あとがきを読むとそれが意図的にとられた仕掛けであったことがわかります。また、ノンフィクションと錯覚させる理由は精緻な歴史関連の描写にもあります。実は作者の「楊双子」は双子の姉妹のあわせてのペンネームで、妹は大学院で歴史を専攻し、日本統治時代の資料調査を担当したとのこと。資料がベースになっているからこそのリアルな描写だったのかと納得しました。食だけではなく、支配する側とされる側の人間、ジェンダー、LGBTQなど、歴史小説ではありながら、現在ともリンクするテーマがそこかしこに散りばめられているのも、魅力の一つです。

  図書館・資料室のご利用 についてはこちら

カテゴリー

月別アーカイブ