「始業式」に引き続き、『教養講座』竹原あき子さん(デザイナー)による「袖が語れば」
日頃あまり注目することのない「袖」というものに着目したユニークなお話を伺うことが出来た。
ソグド人(胡人)に原点がある長い筒袖で打ち前合わせの衣装を遣唐使が日本に持ち帰り、飛鳥天平の朝廷衣裳となった日本の着物の“原点”から始まり、日本の“着物の袖”にまつわる様々な興味深いお話だった。
貴族の来客を迎える寝殿という客間の仕切りの簾から袖や裾を出し、体や顔を隠しながらも歓迎の意を表した「打出(うちいで)」、鎌倉時代の公家や武士が権威を誇示するために糊や漆で固めた「強装束(こわしょうぞく)」、そして“豪華”を演出する重ね着の袖に見られる“グラデーション”は、高価な染料(紅)が少なくて済む手法として生かされている。さらに十二単の重ね着は、素肌にまとう「単衣」と上に着る「打衣」には糊を付け堅くし、5枚の「袿」お裾を膨らませて着ているので、重ねた衣裳をスルリと脱ぐことが出来る。これが「空蝉(うつせみ)」というのは、本当に驚いた。
「打出」-簾から裾/袖だけを見せてお客を歓迎する(京都風俗博物館)
「強装束」-鎌倉時代・藤原道長(紫式部日記絵巻)
セミの抜け殻のような十二単の「空蝉」-京都西陣織会館(写真:竹原あき子)
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海外からの影響を受けながら時代と共に変化してきた「日本の着物」と袖、それぞれにまつわる暮らしのお話と映像に時を忘れた1時間半だった。
興味のある方は、竹原あき子さんの著書「袖が語れば」(2019年)緑風出版をご覧ください。