今日の講師は、南極越冬隊長を3度もつとめた渡邉研太郎さん。自由学園の近所にお住まいです。ご自身は生物学者とか。「極限環境に生きる~南極の生きもの~」というテーマで、海氷の下に育つ植物性プランクトン(ice algae)から、動物性のプランクトン、オキアミ、血液が透明なコウリウオ、ペンギン、アザラシ等まで、南極の豊かな生態系を、かわいらしい写真や動画とともに話していただきました。
でも、話題はそこに止まりません。南極は、1961年に発効した南極条約により「国境のない大陸」であること、他の国の基地へ行くときもパスポートはいらないこと、それが地球の未来をまもる数々の研究活動を支えていること、日本のオゾンホールを巡る研究が世界のフロンガス規制を促進したこと、3千メートルもの厚さの氷床をボーリングすることにより地球温暖化を考えるためのデータ(何十万年にわたる地球環境の変化)が得られつつあることなど、「人類の英知」を感じさせるお話もたくさんありました。国と国との間の殺伐とした争いばかり報道される時代ですが、ホッと心が温まりました。
お話しは、昼食時間にも続きます。越冬隊の生活、その中での楽しみ、防寒服や靴などの装備品についてなど、身近な話題がたっぷりでした。南極の氷も展示されました。解けるとプチプチという音がします。何万年もの間、氷の中に閉じ込められていた空気が解放される音です。地球の歴史を実感する一瞬でした。