企画展「多様性 メディアが変えたもの メディアを変えたもの」へ/前学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

企画展「多様性 メディアが変えたもの メディアを変えたもの」へ/前学園長ブログ - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

前学園長ブログ

企画展「多様性 メディアが変えたもの メディアを変えたもの」へ

2023年8月25日

横浜の「ニュースパーク」の企画展「多様性 メディアが変えたもの メディアを変えたもの」に行ってきました。近代以降の日本社会を多様性の展開という視点から捉えた骨太の素晴らしい企画でした。

社会の無理解の中で人権を認め、様々な差別撤廃のために報道がどのような役割を果たしてきたか、そしてそれがどのように阻まれてきたか、さらにその障壁を乗り越えていく理想を持った記者の熱量、そういったものが織り重ねられたずっしり重く迫力ある内容でした。

第1章は明治期の女性、2章は障害、疾病、民族などによる差別、3章は男女雇用機会均等法以降の社会の問題、4章はジェンダー平等、性的少数者、外国人、少数民族など今可視化されつつある課題、5章はこれからのメディアと多様性を扱っていました。

第1章のコーナーでは、福沢諭吉の男女平等思想の紹介と共に、女性ジャーナリストの草分けとして羽仁夫妻の写真や婦人之友などが並び、時代の先駆けとしての意義が解説されていました。

羽仁もと子執筆の記事が掲載された1899年(明治32年)の報知新聞の実物を見るのは初めてのことで、自伝や社史など書かれたもので理解していた当時の状況が、時代を超えて臨場感を持って迫ってきました。

会場ではありがたいことに館長の尾高さん、学芸員の工藤さんのお話も伺うことができ、理解を深めることができました。

尾高さんがおっしゃった「みえないものや声なき者の声を、一緒の目線から可視化することに力を尽くした名もなき記者たちの取り組み」という一言に、この企画展に込められた思いが集約されているように感じ、胸に迫りました。

さらにこの企画展には、ジャーナリズム自体が社会的強者である男性中心社会であったために、その発信には大きなバイアスがかかっており、女性記者たちが様々な不利益と偏見に苦しみつつそこに風穴を開けてきたという問題意識がありました。

その意味でも、名も無き者の声を可視化し続けている婦人之友は本当に貴重で、読まれるべき雑誌です、とおっしゃっていただきました。

尾高さんが現在の状況について、今多様性を大切にする報道を、男女問わず若手記者たちが担っていることに希望が感じられるとおっしゃったことも印象的でした。

学芸員の工藤さんには私が探している様々な新聞について的確にお答えいただきました。特に羽仁吉一が16歳で創刊に関わった1896年の地方新聞について質問したところ、「その新聞名は見た覚えがある」と、すぐにデータを出してくださったことには本当に驚きました。

活字離れが進む一方でフェイクニュースが広がり、見たい情報・見せたい情報のみにふれ、日々を過ごすことが日常となっているこの時代に、「真実」がどのように伝えられるかということに注意を向けることは非常に重要であり、あらためて時代をつくる上での報道の重みを感じました。

企画展「多様性 メディアが変えたもの メディアを変えたもの」は8月20日(日)まで、ニュースパークでの開催です。
https://newspark.jp/exhibition/ex000318.html

ニュースパーク日本新聞博物館は、みなとみらい線、日本大通り駅直結です。ぜひ。
https://newspark.jp/

 

2023年8月7日 高橋和也(自由学園学園長)

カテゴリー

月別アーカイブ