「すべての子どもたちに学校菜園を」と呼びかけ、その活動が世界に広まっているアメリカのアリス・ウォータースさんをお迎えする会が、自由学園明日館でこの春、4月18日(水)に開かれました。自由学園も主催者に協力し、学生も関わり会の準備をしましたので、その時の様子からお伝えします。
■アリス・ウォータースさん
アリス・ウォータース(Alice Waters)さんは、アメリカのカリフォルニア州バークレーのオーガニックレストランのオーナーシェフで、1995年に地元の市立学校で「エディブル・スクールヤード」を創設した方です。
アリスさんは、学校の菜園で子どもたちが有機農法で野菜を育てて食べることを通じて、いのちのつながりを実感することを大切にし、さらにその感性と知性が育まれるよう「必修教科+栄養教育+人間形成」の3つを結んだ総合的な学びとなるよう推進されました。その実践を通して、子どもたちが生き生きと学び、心豊かに成長する姿が共感を呼び、活動の輪は世界に広まっています。
■一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパンと自由学園の交流
日本でも「一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン」が発足し、2014年から、東京都多摩市立愛和小学校でエディブル・エデュケーションの実践が始まりました。その後ご縁があり、2016年には、エディブル・スクールヤード・ジャパンが主催される研修会が自由学園を会場に開催されました。
その時の様子は、以下ブログをご覧ください、
https://www.jiyu.ac.jp/blog/news/57463
自由学園では、1921年の創立以来、生徒による食事作りを続けており、キャンパスが現在地の東京都東久留米市に移ってからは、生徒による畑での野菜つくりや果樹の栽培、養豚なども始まりました。キャンパスの落ち葉は堆肥にして畑に戻すなど、環境についての学びにも広がっています。「生活即教育」の理念に根ざし、生徒自身が責任を持って生活を創り出す自由学園の「食の学び」の取り組みに、エディブル・スクールヤード・ジャパンの方々が、共感を持って関心を示してくださり、それ以来交流が続いています。
■「アリス・ウォータースさんと食卓を囲む夕べ」のお食事のこと
4月にアリス・ウォータースさんが来日される機会に、エディブル・スクールヤード・ジャパンが主催し、自由学園が協力して、自由学園明日館を会場に「アリス・ウォータースさんをお迎えする会」が開催され、約50名の招待客の方々が集まられました。自由学園からは村山順吉理事長、高橋和也学園長、石川章代食糧部長が出席しました。
今回はスケジュールの都合で、アリスさんに東久留米市の自由学園のキャンパスにいらして頂くことはできませんでしたが、愛和小学校と共に自由学園の食の学びに関するパネルも用意され、明日館一室では、昨年11月に開催した、初等部の「土と育つ子どもたち」の教育発表会で展示したパネルや、野菜を育てて観察する中で生まれた絵や美術作品などを展示してご覧いただくことができました。
■アリス・ウォータースさんのスピーチから
アリスさんは、会のスピーチの中で、次のように話されました。
(一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパンによる英訳文より引用させていただきます。)
「今、私たちの社会はファストフード文化におおわれています。ファストフード文化は、子どもたちに一緒に食卓を囲むという美しい価値さえ忘れさせてしまうかもしれない。家庭でできないなら、学校が支えましょう。私たちは今、食べ物を通して地球温暖化防止に取り組もうとしています。学校が大地の守り手である農家さんと手を組み、学校給食を変えていく。学校菜園を作り、食を学び直す教育をすべての子どもたちが享受できるようにしようと。ここにいる学生たち、若い人たちは今この世界で何が起こっているのかを知っています。そしてそれを変えたいと願っています。今日私はここに来て、皆さんのようなすばらしい人たちにお会いし、若者たちの世界を変えたいという思いは確実にできる、希望が確信に変わりました。誰もが取り組める「美味しい革命」、「エディブル・エデュケーション」を始めましょう。今がその時です。」
会のお食事の献立と料理は、一流のシェフのチームが担当されました。メニューは、自由学園女子部で生徒が作り日々頂いている食事と『自由学園 最高の「お食事」-95年間の伝統レシピ-』の本を参考に決まり、シェフの方々がこの会のために一部レシピをアレンジなさって供されました。食材の一部には愛和小学校や自由学園の畑で収穫した野菜も使われました。
メニュー
★印は自由学園の献立・レシピがベースになっています。
よもぎペースト・オン・トースト ラディッシュ添え(よもぎは愛和小学校・ラディッシュは自由学園産)
サクラ・スパークリング(桜花は自由学園産)
★マカロニサラダ(マカロニは自由学園食糧部が探してマカロニサラダに最適と学園で使っているもの)
★スナップピーふり味(スナップピーは愛和小学校産 自由学園のピーマンのふり味から)
★人参グラッセ
★筍の木の芽和え(筍と山椒は自由学園産)
★シェパーズパイ(自由学園女子部卒業生の人気No.1)
ガーデンレタスサラダ(アリスさんのレシピ)
★チーズフィンガーとパンドカンパーニュ(チーズフィンガーは自由学園パン工房製)
★苺のショートケーキ(学園の新入生歓迎会で出るもの)
料理は、アリスさんのレストラン「シェパニーズ」でシェフをされて、現在は日本でレストラン「ブラインドドンキー」を開いておられるジェローム・ワーグさんと、日本で共同でシェフをされている原川慎一郎さんが担当され、料理家の船越雅代さんが、ケーキとテーブルコーディネイト、装飾を担当されました。
シェフの皆さんは、事前に学園にもいらしてくださり、学園の献立をベースにメニューを決めてくださったご縁もあって、当日は、学園の食に関わる教職員と、最高学部学生もご一緒にお料理をさせていただきました。食糧部が協力し、学園のお皿や器具なども使っていただきました。テーブルセッティングやサーブも、学生が一流の方に教えていただいてご一緒に仕事をするすばらしい機会をいただくことができました。
後日、エディブル・スクールヤード・ジャパン代表の堀口博子さんが、アリスさんから届いたコメントをご紹介くださいました。
My dear friend Jerome Waag of the@theblinddonkey.jp created a wonderful meal for an Edible Schoolyard Japan benefit! It was held at Myonichi-kan in Tokyo.(the house of tomorrow) What an extraordinary setting! It was actually a school designed by Frank Lloyd Wright with a garden where the students grew vegetables for their lunchies. How enlightrened 100 years ago! But it is still a school and the students are still cultivating the garden!
アリスさんには、初等部のDVD「土と育つ子どもたち」と、最高学部生が作った学園のゆずのジャムを差し上げました。ぜひ、次回日本にいらっしゃる時には、自由学園にもいらしていただけたらと願います。
この会の開催にあたり、自由学園に声をかけてくださった一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパンの皆様には大変お世話になり、心より感謝を申し上げます。
以下、当日の会の様子の一部を、写真でご紹介します。
美しく整えられ、お客様をお待ちする明日館食堂。暖炉の周りには藤の花が飾られました。
一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン代表 堀口博子さんのお話で会が始まる。
アリス・ウォータースさん
アリス・ウォータースさんにお話をしていただく。
着席されたお客様
高橋学園長が自由学園についてお話する。
お食事はテーブルで取り分けられ、和やかに進められた。
マカロニサラダ
スナップピーふり味、人参グラッセなど。学園のすみれの模様のお皿に盛り付けて。
パン2種
ガーデンサラダ
手前がシェパーズパイ
苺のショートケーキ
お料理の様子 学園教職員と学生も参加。
シェフ3名。ジェローム・ワーグさん、原川慎一郎さん、船越雅代さん。
会場準備、料理、おもてなしの手伝いをした自由学園最高学部生が感想を述べる。
自由学園初等部の「土と育つ子どもたち」の展示室にて
最高学部学生がアリスさんに質問をしたところ、ていねいに応じてお話くださった。
初等部展示室への道筋に、学園の食の学びのパネルが展示された。パネル製作はエディブル・スクールヤード・ジャパンが会のための他のパネルと共にデザインして下さった。