「探求」-自由学園男子部・女子部2022年度の探究学習- 昨年度の経験を活かし教師が工夫/お知らせ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

「探求」-自由学園男子部・女子部2022年度の探究学習- 昨年度の経験を活かし教師が工夫/お知らせ - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

お知らせ

「探求」-自由学園男子部・女子部2022年度の探究学習- 昨年度の経験を活かし教師が工夫

2022年5月24日

今年度(2022年度)から高校で文部科学省による新学習指導要領が導入され、中高共に探究学習が必修となりました。自由学園男子部・女子部(中・高等科)では、すでに昨年度から全生徒が取り組んできています。
2021年度の「探求」の実践、また3学期の「学びの共有会」の経験に基づき、生徒たちが今年度によりよい「探求」を行えるようにしたいと検討した結果、昨年度の実践に加えて、新しく始めたプログラムがありますのでご紹介いたします。

※自由学園では探究学習を「探究」ではなく、「探求」としています。
自由学園の探求についての考え方は、以下のブログをご覧ください。
https://www.jiyu.ac.jp/blog/info/80062

2021年度の実践を振り返って
2022年度の「探求」の計画を立てる上でまず行ったのは、2021年度に「探求」の学びに関わった男子部・女子部(中・高等科)の教師全員が参加するZOOM会議でした。生徒たちの様子と3学期の「学びの発表会」での結果を踏まえて、よかったと思う点と改善したい課題、解決のための提案などについて、関わった教師皆が話をして聞き合いました。会議を通して意識の共有がはかれ、また多くの意見が集まりました。それらの意見を参考に「探求」の推進役の教師数名を中心に2022年度の「探求」の進め方を考え、4月から実践できるように教師皆で準備を進めました。

昨年度は生徒が自分で考えて自由に探求を進めていくことを重視しました。それは変わらず大切にしたいことですが、今年度は前段階として、調査や考察等の基本的な手法を生徒が学べるような講座を1学期に行うことにしました。それにより生徒の視野が広がり、教師の助けがなくてもより柔軟に手法を考えて進めていけることを期待しています。
自由学園では創立当初より総合的な学びを重視してきましたが、時間割に「探求」の時間が設けられたのは昨年度が初めてでした。教師自身もまさに探求しながら、生徒たちへのサポートをよりよくしたいと考えています。

2022年度からの新しい試み

目次
1.時間割の工夫
2.「探求」を進める上で必要な手法について講座を設ける
・中等科の探求について 「ショート探求」・「コース別探求トレーニング」
・高等科の探求について
3.「問い」を立てて本格的に「探求」を始めるのは2学期から

1.時間割の工夫
中等科では、2022年度から土曜日の午前中4単位すべてを「探求」の時間としています。
時間を充分使えることにより、生徒一人一人が問いについて探究する上での活動の幅に自由度が増すと共に、途中で遮られることなく「探求」に没頭できるようにしました。
高等科は他の科目との兼ね合いから、ここまでの時間数は取れませんが、土曜日に「探求」の時間があります。中等科で充分「探求」を実践して「学び方」を学ぶことにより、高等科に進んだ時に効率的な時間の使い方もできるようになると考えています。
(自由学園では、中高共に地方・海外から入学している寮生がいますので、土曜日は毎週登校し、夏冬の長期休みの日数を増やしています。)

2.「探求」を進める上で必要な手法について講座を設ける

■中等科の探求について
1学期は、自由学園における「探求」の取り組みの意味を十分理解することと、探求を進める上で必要な情報収集の仕方等、手法について知ることから始めています。
中等科は男女一緒で、3学年も混ざって「探求」の時間と場所を共有しています。
4月はオリエンテーションと、一人一人にとっての「探求」の意味を考えました。
5月は「ショート探求」さらに「ミドル探求」と銘打ったプログラムを始めています。

「ショート探求」
5月7日(土)に、午前中の4時間を使って「自由学園を探求する」をテーマとして、グループに分かれて様々な分野、様々な手法で自由学園について調べてみることをしました。わかったことをレポートにまとめてグループ内で共有し、それを通して自分の調査の仕方等についても振り返って経験を次に活かしていけるようにしています。

「コース別探求トレーニング」(ミドル探求)
「コース別探求トレーニング」の目的は、今後一人一人が各自の問いをテーマに探求を進める上で必要になってくる手段、方法について学ぶことです。
5月14日から始まった前半のコース別探求トレーニング講座では、「問いの立て方」・「調査方法」・「分析・考察・ドキュメンテーション」・「共有・リフレクション」などの手法について学ぶことを目的とした生物、数学、社会、造形、インタビュー、調査方法等、さまざまなジャンルの講座を設けました。いずれの講座も学園の各分野の教師が考えて準備した独創的な内容です。
生徒は6分野の講座の中から好きな講座を二つ選んで参加しています。
専門分野により、探求の方法などが異なる場合もありますが、情報収集や正しい情報を得るための確認や考察など、どの分野にも共通する手法が多々あります。

5月14日(土)中等科のコース別探求トレーニング講座の様子から(一部)


  • テーマ:インタビューを通した探求 模擬インタビューも。

  • テーマ:ダンゴムシの行動実験 まず教室の外に出てダンゴムシを捕まえてきた。

  • ダンゴムシのテーマは希望者が最も多く抽選により参加者が決まった。

  • テーマ:子どもの幸福と人権

  • テーマ:手にも考えてもらう数学

  • テーマ:本当に知るってなあに?

上記の他に「造形活動—探求」のテーマもあり、作品の制作を進める上で様々な探求を実践していた画家や彫刻家を通して探求について学ぶグループもあります。さっそく数人の芸術家について、資料等を調べることを図書館やインターネット等を通じて調べ始めていました。

最も生徒に人気のあった「ダンゴムシの行動実験」の部屋で生徒に聞いたところ、「図鑑ではよく見ていたけれど、実際に見たことはあまりなかった」という人もいました。学園は自然も多くダンゴムシはたくさん見られるので、教室の外に出て皆でつかまえてきたそうですが、シャーレに大小沢山のダンゴムシをつかまえたグループや、脱皮した皮も見つけて取ってきたグループなどもありました。工作用紙を使ってグループごとに迷路を作り、ダンゴムシが左右どちらに進むのかを観察すること等を通して、実験の仕方や考察の仕方などを学んでいました。

なお、各生徒は2講座までなので、参加しなかった講座の中に、今後一人一人が「問い」を立てて探求する上で必要になってくる手法や考え方が含まれる場合もあるため、フォローできるようなミニ講座の機会も準備中です。

6月18日に開始予定の「ミドル探求」の後半では、より実践的に「探求」を進める上での手法を学んでいく予定です。中等科2,3年生は、昨年度も「探求」を行っているので、希望者は講座をスキップして個人の「探求」に進んでもよいことにしています。

■高等科の探求について
高等科生は中等科よりレベルの高い「探求」をおこなえるよう、手法を学ぶコース別探求トレーニングは、一部最高学部(大学部)の教員も担当して行われます。
統計解析・フィールドワーク・アンケート/インタビュー・文研研究等の分野の講座があります。

5月14日(土)の高等科生対象のガイダンスの様子
自由学園の目指す「探求」は、知識偏重ではない、人間教育としての探求教育であることの意味を再確認し、1学期の進め方を説明しました。
人まねでなく自分でよく考えることが最も重要で、各自の個性を生かしていくことが大切ですが、探求を進めるための様々な手法について知り、それらを十分生かすことも必要です。
高等科は男女別にガイダンスを行い、男子部は高野慎太郎教諭、女子部は鈴木雄紀教諭が、「探求」の推進を担当している教師として説明をしました。


  • 高等科全員を対象に行われたガイダンス。

  • 自由学園の目指す「探求」の考え方を再確認しつつ今後の進め方を説明する高野慎太郎教諭

3.「問い」を立てて本格的に「探求」を始めるのは2学期から
上記のような準備期間を経てから、2学期からはいよいよ生徒一人一人が自分の「問い」を決めて、「探求」を本格的に進めていく予定です。
中等科2・3年生の中には、昨年立てた「問い」をさらに深く探求したり、そこから発展した「問い」について探求する人もいるかもしれません。

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