2023 夏休み すいせん図書  №5 /図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

2023 夏休み すいせん図書  №5 /図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

図書館 お知らせ・近況

2023 夏休み すいせん図書  №5 

2023年8月21日

【すいせん図書 2023.8.21

国語科 K先生
『増補新版 いま生きているという冒険』石川直樹 新曜社
遠くに行くことばかりが旅ではないけれど、やっぱり未知の地へ踏み出してみたい。何度でも読み返せる本がここにある。
ある時は気球の上で、ある時はチョモランマ(エベレスト)のてっぺんで、またある時は南極で、著者はどこまでも旅をして文を書く。生きている内に立ってみたい土地がきっと増えます。

英語科 W.Y.先生
『はじめての哲学的思考』苫野一徳 著 筑摩書房
―なぜ人を殺してはならないの?生きる意味とは何だろう?人生の問いから社会の難問まで力強く「解き明かす」哲学の考え方を知ろう。
学園でもお世話になっている熊本大学教育学部准教授・苫野一徳さんによる、哲学的思考への入門書。みなさんも上記のような問いを考えたことはないでしょうか。それは哲学への立派な入門です。人間は誰しも哲学者。その思考法のエッセンスを分かりやすく語ってくれています。「相手を言い負かすための議論術」の虚しさと、それに代わる哲学対話の方法がとてもタメになります。これから対話をしていく上で、ぜひとも読んでほしい1冊です。

『よごれつちまつた悲しみに……』中原中也 著 集英社
みなさんは、好きな詩人はいますか。好きな詩はありますか。私には詩は分かりません。それでも、なんだか気になります。その中でも中高生のときに惹かれたのが、中原中也の詩です。なぜ惹かれるのか。それも分かりません。それでも詩集を買って、今でも手もとに置いてあります。

 ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
   ……(「サーカス」)
 汚れつちまつた悲しみに
 今日も小雪の降りかかる
   ……(「汚れつちまつた悲しみに」)
 ホラホラ、これが僕の骨だ、
   ……(「骨」)
みなさんもなぜか気になる一編をみつけてみるのもいいかもしれません。

『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』今井むつみ 著  秋田喜美 著 中央公論新社
―なぜヒトはことばを持つのか? 子どもはいかにしてことばを覚えるのか? ヒトとAIや動物の違いは? 言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることである。
英語科の教員は、言語を用いて言語を教えることが仕事です。しかし、言語とは何か、という根本的な問いはとても難しい問いです。加えて、現代はAI時代。このような時代にあって、言語の本質とは何かを考えることは、言語という視点から人間存在を考える上でも、とても重要なことだと思います。あなたはなぜ英語を学びますか。あなたにとって言語とは何ですか。ぜひみなさんといっしょに考えていきたいテーマです。
少し難しく感じられる箇所もあるかもしれませんが、オノマトペをきっかけに、分かりやすく議論が展開されているので、興味のある人は手に取ってみてください。
英語学習に関心がある人は、今井むつみ『英語独習法』(岩波新書)もおすすめです。

 

 

『ナマケモノ教授のムダのてつがく 「役に立つ」を超える生き方とは』辻信一 著 さくら社
みなさんが「ムダ」に感じるものは何ですか。それは本当に「ムダ」なものですか。効率の良さが大事なときもありますが、現代社会では効率が重視されすぎて、「ムダ」の肩身が狭くなってはいませんか。効率の良さを絶対の基準にして、物事を(ときには人でさえも!)「役に立つ」か「役に立たないか」で二分にしてはいないでしょうか。すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなります。「役に立たなくてもよくはありませんか」という視点で社会を、世界を眺めてみたら、そこにはどんな豊かさが広がっているでしょうか。「ムダで何が悪い!」そんな気概も持ちたいものです。

社会科 T先生
『戦争と外交の世界史』出口治明 著 日経ビジネス文庫
「新たな戦前が始まった」といわれるように、ウクライナ侵攻以降、戦争を抜きに歴史は語れなくなった。「戦争は外交によって克服できないのか」という問題提起は重い。20世紀は「戦争の世紀」であったが、著者は第1次大戦と第2次大戦は「繋がっていた」としており、私達はこれをもう一度受け止めるべきである。そして、ウィルソン大統領によるヴェルサイユ体制の挫折を踏み台として、ルーズヴェルトが大戦の最中から構築したのが「戦後体制」であると著者は解説している。戦後78年を経た私達の「現在」は、このような「歴史の果て」であると認識すべきであり、その上で未来の展望を考えなくてはならない。
「平和は均衡の上に立つ」と著者の視点は歴史的に語る。イタリアは、都市国家の対立で国民国家の成立が遅れて分裂のなかにあったが、15世紀の「ローディーの和」が「平和条約の貴重な先例」であり、その平和の上にイタリアルネサンスが花咲いたことを指摘する。この平和は残念ながら40年しか続かなかったが、外交が平和を創りだしたことの歴史的意義は大きい。この均衡は「天の時、地の利、人の和」によって生まれたというのは平和の難しさを物語る。

国語科 S先生
「源氏物語」。高等科の皆さんで、今まで書名はよく耳にするけれど、実際には読んだことが無いという人、まずはこの夏、現代語訳で読んでみませんか?実は、大学入試でも毎年のように出題される「源氏物語」。世界の二十ヶ国以上で翻訳され、多くの人に愛されています。その美しさ、その哀しさは、たぶんあなたの想像を超えてきます。人間の命と、尊厳、愛するとは、どういうことなのか。生きることの難しさ、永遠とはどういうことなのか。答えが見つかるかもしれません。原本は、全54帖(巻)。
『六条御息所 源氏語り上・下巻』 林真理子訳 小学館文庫
「愛する」がテーマ。源氏物語のほぼ全巻にわたって登場する、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)が、いかに光源氏を愛したかということが、情熱的に濃厚に書かれています。著者は日本大学の学長となられた林真理子氏。

 

『新源氏物語 上・中・下』 田辺聖子訳 新潮文庫
これは「おもしろい」がテーマ。関西人である著者が、源氏物語が現代文学であるかのように、明るく、リズミカルな文章で書いています。読みやすさで言ったら、多くの現代語訳の中で一、二を争うでしょう。まるで漫画を読んでいるかのように生き生きと書かれています。


『源氏物語上・中・下』 角田光代訳 河出書房新社(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 4・5・6巻)

光源氏の「運命を生きる」がすらすらとわかる3冊。おそらく最新版です。簡単な説明がついていて、さくさく読めますし、多くの公共図書館に置かれています。訳者は映画化された「八日目の蝉」など、たくさんの作品を書いた売れっ子作家。ぜひ、手にとってみてください!上巻だけでもスリル満点です。

 

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