2023 夏休み すいせん図書  №6 /図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

2023 夏休み すいせん図書  №6 /図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

図書館 お知らせ・近況

2023 夏休み すいせん図書  №6 

2023年8月28日

【すいせん図書 2023.8.28

社会科 H先生
今年は、関東大地震から百年にあたります。関東大地震は、1923年9月1日の昼頃に発生しました。大規模な火災も発生して約10万人もの死者が出ました。地盤の隆起、津波、土砂崩れもあり、家屋の倒壊でも多くの方が亡くなりました。戦後の調査により、震災の被害が本当はどうであったのか、わかってきています。
『関東大震災』吉村昭 著 文春文庫
 関東大震災の全体像がわかるノンフィクション小説。
『関東大震災 大東京圏の揺れを知る』武村雅之 著 鹿島出版会
関東大震災では、どのくらいの被害があり、震度がどうであったかがわかる本です。
『関東大震災が作った東京』武村雅之 著 中央公論新社 
関東大地震の被害の様子、その後の復興について書かれています。
『九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイトの残響』加藤直樹 著 ころから
残念なことに、地震の数日後にはデマからジェノサイドが起き、韓国や中国の人が約6000人も殺害されました。2010年頃から東京でも外国人へのヘイトスピーチがありました。もっと日本の人たちに、過去にあった関東大地震の悲惨なジェノサイトについて知ってもらおうと、各地を取材し証言を集めた著者が、自身のブログに載せた内容が本になりました。
夏休みに、ぜひ読んでみて下さい。

『首都水没』 土屋信行 著 文春新書
東京は、世界約600の都市の中で最も災害の危険リスクの高い都市であることがスイスの生命保険会社の調査(2013年)により発表された。地震と共に水害の危険性もとても高い。なんと東京の土地の40%が0m地帯である。実は人為的な影響で0m地帯ができたのである。また、日本を代表する河川の利根川は、現在大洗から太平洋に流れているが、江戸時代の初期までは東京湾に注いでいた。荒川は、荒川放水路(現在は荒川と呼ばれる)が作られた歴史がある。この本を読むことで、東京の河川改修の歴史、今までに起きた災害、これから私達がすべきことなど多くの気づきを与えてくれる本。自然災害に興味のある人はぜひ読んでみて下さい。

『ライトニング・メアリ ー竜を発掘した少女― 』アンシア・シモンズ著 岩波書店
英国の南西部のライムジーリスの近くには、三畳紀からジュラ紀の地質が露出し多くの化石が産出することから、ユネスコの世界自然遺産に登録された崖があります。この本は1800年代に初めて魚竜(海に生息する恐竜)の全体骨格を発掘した少女、メアリ・アニングのお話です。当時は男性社会で、多くの化石を大発見したにも関わらず、メアリの名前は化石の学名にはありません。しかし、彼女がどれだけ優れた知識を持っていたか、多くの人が記していました。それがまとめられて、このような本になりました。おしゃれをするよりも地層を見ることが好きな変わった少女が、どのようにして世紀の大発見がをするか、読んでいてワクワクします。当時は病で多くの人が亡くなり、人の寿命も今より短い時代。メアリは悲しみを体験しながらも逞しく生きています。これから社会で生きていく皆さんにぜひ読んでほしいです。

国語科 T先生
『ワタシゴト』『あなたがいたところ』『いつものところで』中澤晶子作 ささめやゆき絵  汐文社
広島市在住の児童文学作家、中澤晶子さんが書き継いできた、「ワタシゴト 14歳のひろしま」シリーズの3作目がこの夏、完成し発刊されました。
「ワタシゴト」は中澤さんオリジナルの言葉で、記憶を手渡す「渡し事」と、他人のことではない「私事」の意味が込められています。
長年修学旅行生を案内し関わってこられた経験から14歳の視点で原爆の事実を捉え、現在と過去をつなげていく内容に読者も引き込まれていきます。自分事としてとらえ、平和を考えるきっかけを与えてくれる、そんな素敵な3部作です。どの1冊、どの章から読んでも内容が分かる構成です。

『戦争日記-鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』オリガ・グレベンニク著 河出書房新社
ウクライナ出身の筆者が鉛筆1本で実体験を走り書きのメモと絵でつづった日記です。
爆音が響くハルキウの地下室での避難生活から、国外へ脱出までの真に迫った体験を、描かれた絵によって容易に想像させられます。
絵本作家・イラストレーター・アーティストとして活躍する著者が挿絵を描いた絵本は、すべてベストセラーになり世界各国で人気を博しています。そんな彼女が2児の母として戦禍の中で必死に子どもを守ろう、そして生きようとしている思いがこの日記から伝わります。
この本の売り上げからは、1冊につき100円がウクライナ赤十字社に寄付されます。ひ手に取っていただきたい1冊です

英語科 W.Y.先生
『夜のピクニック』恩田陸 著 新潮社
― 夜だから、いつものみんなも違って見える。私も少し、勇気を出せる。
高校生活最後を飾る一大イベント「歩行祭」。全校生徒、夜を徹して80キロを歩きとおす。これだけでワクワクしてきますよね。
高校1年生の読書感想文に、「自分の学校にも歩行祭があればいいのに」と書いたら、「それは無理でしょう」と朱書きが返ってきたことを思い出します。
映画化作品で使われている楽曲も、ぜひ聴いてみてください。

『ノルウェイの森 上・下』村上春樹 著 講談社
著者によると「100パーセントの恋愛小説」。私にはそうは思えなかったのですが、歳を重ねるごとに、そうかもしれないと思えるようになってきました。大学生の主人公たちが織り成す、喪失と再生の物語。何度か読み返したくなる小説です。
この小説を読むと、
・四ツ谷~駒込までのコースを散歩したくなる
・The Beatles の “Norwegian Wood” を弾き語りしたくなる
・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』を読みたくなる
こと間違いなしです。

社会科 T先生
『桑田圭佑論』スージー鈴木 著 新潮新書
「先生はどんな時代を生きてきましたか?」
65年という年輪を重ねてしまうと「自分の生きてきた時代」というワードが妙に心に刺さる。(時代論は柄でもないのだが)。そんな時、ちょうど『桑田圭佑論』を読んでいた。サザンオールスターズのシンガーを論じるというのは、なんとも奇妙である。しかも新書といういわば「一般向け」に桑田圭佑が論じられるとは、なんともいえない。
個人的には二十代のまさに「青春只中」で「いとしのエリー」にシビレた記憶が忘れならない。「これは永遠のヒットナンバーだ」と感動したものの、クラシック畑の私はそれ以後サザンにひっかかることはなかった。ただ、「TUNAMI」や強烈なメッセージソングである「ピースとハイライト」には強く共感した。また、コロナで孤独に授業ユーチューブを誰もいない教室で作っていた頃は、サザンをよく聴いていた。
本書を読んで、「果たして桑田圭佑はこんな風に時代を歌っていたのか」というのがおぼろげながら見えてきた。「ロックンローラーは、言葉と情念を人の心にぶつけて時代を作ろうとしていたのか」というと大袈裟かもしれないが、少なくとも著者のいう桑田の「偉大さ」には、そのような意味合いが強いと私は思う。
実は、桑田圭佑は私の2歳年上である(学年では3年か)。「時代遅れのロックンロールバンド」が2022年に発売された時、私は「そうだよね、そこまで来たよね」と思った。そして自分と同じ時代を、歌うことで生きてきた桑田圭佑がいてくれて本当に「よかった」と、再びシビレたものである。サザンオールスターズと桑田圭佑に少しでも「ひっかかる」人は、その引掛かりを本書から掘り下げてほしい。

 

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