今週の1冊『偶然の散歩』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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今週の1冊『偶然の散歩』

2023年9月18日

2023年9月18

『偶然の散歩』 森田真生 著 ミシマ社
「散歩」が好きです。表題に引かれて手に取りました。この本の著者は、数学の”独立研究者” として活動される、大学などの教育・研究機関外にいる数学者です。自宅が拠点である生活は、子ども(家族)の身近にいる時間が多い。「おとーさん、おさんぽいこう!」と子どもたちとともにする散歩もあれば、哲学者・思想家と対話する散歩もある。そこからの発見を「偶然」の出会いに、紡がれたエッセイ集です。(日経新聞「プロムナード」他に掲載されました)
著者は「散歩は、子どもたちとの本当の散歩のときもあれば、先人や先達との、時空を超えた思索の散歩のこともあった。二度とない偶然の散歩を、心に刻みつけるように書いた。」と、まえがきに記しています。著者を取り巻く生活の中から、「数学」と「言葉」に対する深い思索が紡がれていきます。どの章から読んでも、味わい深い、穏やかな文章が並んでいます。あとがきにある「偶然と必然、一瞬と永遠を巡る論考」に至るまでとても興味深く、読んだ後には深呼吸をして、何かを考えている自分がいます。「歩く速度でしか見えないものがある」とは、私たちの生活の中で忘れてはならないことの一つだと思います。
装丁についても一言。この本を小口(本を閉じた側)からみると縦縞模様になっています。本文紙(ほんもんし:文章を印刷してある紙)に、色も手触りも違う7種類の紙を使っているから。その紙の風合いが、活字の形やインクの色が、紙をめくるささやかな音が、読み手の中にことばを運んできます。電子媒体では得ることのできない、読書体験。紙の本を読むことは、自分の足で散歩することと通じるものがあるかもしれません。

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