今週の1冊『ゆうびんの父』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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今週の1冊『ゆうびんの父』

2024年10月7日

2024年10月7
『ゆうびんの父』 門井慶喜 幻冬舎
1円切手に描かれた肖像画の人物、明治の日本で郵便制度を作った前島密の半生を描い小説。幼い日、母に送り出された越後から、大阪・江戸・函館・長崎・薩摩、さらにアメリカへヨーロッパへ、人生を旅しながら日本の「郵便」を生み出すまでの話。
天保6年(1835)越後生まれ、幼名は房五郎。豪農とはいえ貧しい家の生まれだが、幼少期からより広い世界へと背を押した母親のおかげと、持ち前の好奇心とで、次へ次へと幕末の時代を流れていく前半生には驚いた。医術、漢学、オランダ語、操船術、英語と、新しい知識を求めて一所に落ち着かない。様々に名を変え、勝海舟、大久保利光、大隈重信、伊藤博文など著名な人たちと出会い、ようやく維新後に新政府の民部省に腰を据えた。
母を東京に呼び寄せるために手紙を送ろうとしてふと手を止める。この大事な手紙は果たして母に届くのか。幼い日、母に他藩の親戚まで手紙を届けさせられたことを思い出す。母が飛脚を信用しなかったからだ。遊学中、届くはずの本が紛失し、その知らせさえも手元に届かなかったことも。そして始めた新しい政府による飛脚便事業。自分はトップに立たず、制度設計をする二番手であろうと、前島は郵政の先駆けとなり制度を定着させていった。どんな田舎にも同じ料金で、いつも郵便が届くように。
郵政事業が民営化され、インターネットが普及し、手紙を書く人は激減している。宅配業者との競争の中、今月からは郵便料金が値上げされた。前島が名付けた「郵便-ゆうびん」は今後どのように変化していくだろうか。
明治日本に郵便制度ができていく様子もさることながら、人材が輩出される幕末という時代の気風、教育ということ、母子の絆等に思いを巡らせ、考えさせられる本でした。

 

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