今週の1冊『生成AI時代の言語論』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2025年3月3日
2025年3月3日「生成AI時代の言語論」 大澤真幸著 左右社生成AIは日々進化し、ChatGPTに何かを投げかければ、まるで人が答えてくれているかのような錯覚に陥る返答が返ってきます。だとしたら、人間が人間として操る言葉とはいったい何なのでしょうか。社会学者である著者が、各界の研究者と話し合った記録、また大澤が書いた論文が収められているのが本書です。本書で指摘されているのは、現在の生成AI開発が、私企業によって行われていることです。これは、生成AIは利益追求をする一企業に都合の良い形に操作される危険性を常にはらんでいることを意味します。たとえば生成AIは大規模言語モデルから日々学習し、言葉の配列をより自然に、人間に近い形にしているわけですが、その大もととなる言語モデルに偏りはないのでしょうか? また、医師やトラックドライバーについて尋ねると、男性の職業としての答えが返ってくるケースがあり、それによって問うた人間の側にもそうしたジェンダーバイアスを無意識のうちに植えつけられる可能性が出てきます。こうしたこと一つをとっても、特定の企業がこのシステムを握ることには危険性がありますが、だとしたら公共のモノとしていくにはどうすればよいのか、その具体策までは本書では触れられていません。私たちは、生成AIとどう付き合っていけばよいのか。これを使いこなす主体となれるのか、それとも人間が生成AIに寄っていってしまうのか。今ちょうどその過渡期なのかもしれません。だからこそ、今、読んでおくのにおすすめの一冊です。
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