今週の1冊『カフネ』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2025年4月28日
2025年4月28日『カフネ』 阿部暁子 講談社主人公の薫子は41歳。薫子の弟が亡くなり、その元彼女・せつなと待ち合わせるところから物語が始まります。一回り以上年齢が下のせつなは、薫子にふてぶてしい態度をとり、険悪な幕開けです。が、その後いろいろあって、この二人はバディを組んで家事代行業務を週末だけ一緒に行うことに。気が合わないのか合うのか、微妙な部分を攻めてくる描写が、ページをめくる手を止めさせません。せつなは料理を、薫子は片付けと掃除を担当するのですが、このせつなの料理が見事としか言いようがない。まるで目の前にその料理が並んでいるかのように思えてしまうのは、著者の筆力の高さと料理への愛の大きさ故でしょうか。薫子の弟、遺体の第一発見者である同僚、せつな、薫子の元夫、両親。登場人物一人ひとりの人生は、一筋縄ではいかない。でも、生きていくというのはそういうことなのかもしれません。順風満帆そうに見える人にも秘密はあり、つっけんどんな感じの人にもそうした態度をとらざるをえない理由がある。なんでも白黒はっきりさせたがる人の多いこの社会の中で、多くはそんなに簡単に割り切れないんだよ、ということを教えてくれる一冊でした。ちなみにタイトルの「カフネ」とはポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」で、せつなが所属する家事代行サービスの団体名です。本書は2025年第22回本屋大賞を受賞しています。
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