この季節は毎年様々なメディアで、「戦争を振り返り平和を考える」ことがとりあげられます。学園の図書館でも、「身のまわりの戦争遺跡や資料館などに目を向けてみましょう」と呼びかけています。「読書」という手段も、ひとつのアクションです。
第4週は図書館の先生と図書・記録実習グループの学生からです。
『女の子たち風船爆弾をつくる』 小林エリカ著 文藝春秋 2024年女の子と風船の組み合わせはすてきです。でも、女の子と「風船爆弾」は?
「風船爆弾」とは比喩ではありません。太平洋戦争において、本物の爆弾を気球に搭載し、太平洋を渡って遠く米国本土に攻撃するために開発された「兵器」だったのです。その風船部分の製作を担ったのは、学徒勤労動員で動員された女学生たち。
この本にはいくつかの「しかけ」があります。「戦争」「歴史」でよく使われる言葉がちっとも出てきません。文中の「わたし」「わたしたち」の使い方に惹きつけられ、そしてゾッとさせられるかもしれません。戦争の時代に生きるってこういうことなのかと思いをはせながら、ふと既視感にとらわれる、今と地続きなお話です。(M.T先生)
『おこさま人生相談室 おとなのお悩み、おこさまたちに聞いてみました』 小林エリカ著 柏書房 2025年おとなたちの悩みに、102人のおこさま(平均年齢7.3歳)が答えた(あるいは答えない形で応えた)人生相談室。おこさまたちのお返事もおもしろいけれど(絵もあります)、それはなぜかといえば、聞き手の小林エリカさんがおこさまの言葉ややりとりを「正確に」受けとめて、そして再現しているから。それから、私としては、小林エリカさんが描かれたおこさまたちの姿と表情にすっかり降参しました。思慮深さ、賢さ、義しさ、優しさについて、考え直す1冊です。(M.T先生)
『川田文子さんのこと』 山澤遥乃・山澤綾乃著 自由学園出版局 2022年2021年度は自由学園で「探求」の学びが始まった最初の年。「前例」も「方法」もないなかで、当時高等科3年生だった著者(姉妹)は「川田文子さん」を知りたくて、手と足と頭をぶんぶん使って川田文子さんをたずねていきました。
川田文子さんがどんな人だったのか、どんな服を着て、何か好きだったのか、どうして死んだのか、この本に書いてあります。それだけでなく、山澤さん姉妹がどんなふうに川田文子さんに出会って、どんなおしゃべりをし、そして大切な友達になったかも書いてあります。
「私も/僕も川田文子さんを知りたいな」と思ってくれたあなたに、できれば手渡ししたい、大切な一冊です。(M.T先生)
『ひろしまのぴか』 丸木俊 絵・文 小峰書店 1980年
1945年8月6日午前8時15分、広島に原子爆弾が投下されました。この絵本では、原爆が投下されてからの出来事を、ある家族の視点から描かれています。私も小学生の時からたびたび読んできましたが、とても印象に残るページの多い1冊です。原爆投下から80年を迎えた今、ぜひ読んでみて下さい。(Hさん)
『学校に行かない子どもが見ている世界』 西野博之著 KADOKAWA 2024年
学校に行かない子どもが近年増えていく中、社会はそれを問題と捉えていますが、その学校を行かないと選んだ子供や親などはどのような考えを持っているのかが書かれています。問題と考える一方的ではなく、新たな考え方のきっかけとなればと思います。(Mさん)
『永遠の0』 百田尚樹著 講談社文庫 2009年
戦争終結から80年。80年前に日本の為に命を掲げた特攻兵を知っていますか?
特攻兵は命を喜んで捧げたわけではなく、家族と生きたいという想いと国を守想いの二つの思いが葛藤し、特攻兵の人間性が描かれた作品です。(Mさん)
『しかもフタが無い』 ヨシタケシンスケ著 ちくま文庫 2023年
日常の中での行動、興味の出ること、無意識にやってしまうことなど、私たちの生活で出てくる物を文庫の中に絵のみで描いた本です。なぜか読んでいると元気になったり笑顔になってしまいます。(Mさん)