今週の1冊『学ぶとは -数学と歴史学の対話-』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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今週の1冊『学ぶとは -数学と歴史学の対話-』

2025年9月1日

2025年9月1
『学ぶとは -数学と歴史学の対話-』 伊原康隆、藤原辰史 ミシマ社
 数学者である伊原さんと、歴史学者である藤原さんが「学び」についてやりとりをした往復書簡を書籍化したものです。1938年生まれの伊原さんと76年生まれの藤原さん。年齢も専門分野もったく違いますが、「学び」について深く考えている人同士、魅力的な言葉の往復がされています。
 「簡単にわかった気にならないこと」という章で藤原さんは、伊原さんから送られた文章の中の、「実数」「虚数」「自然数」などへの言及から、自身の考え方の脆さに気づく、ということを書いています。そして、伊原さんの思考の中に「簡単にはわかった気になるな、大きな物語や権威筋の理論に同調しない、納得するまで問い続ける、第二に、定義があいまいなまま大手を振って流通する言葉に注意せよ、そして第三に、レトリックに溺れることなく、実体験に根ざした理論を模索せよ」(同書106頁)という態度が存在する、と書いています。「タイパ」「コスパ」が重視され、文章はAIに書かせ、どこか言葉が宙に浮いているような感覚に陥っている世の中に、一本の鋭い矢を刺しているような気がしませんか。人が人であるためには、自らの頭を使ってよく考え、自分の言葉によって表現し、それを他者と分かち合うこと、つまり対話が必要です。その土台には、謙虚な姿勢での不断の学びがなくてはならないことが、2人の言葉からわかります。
 著者の2人は、お互いを尊敬し、時には間違いを指摘し合い、より高い理解を共に目指そうとします。それは自然科学と社会科学の境目を飛び越え、もっと広く世界を見ていこうという挑戦でもありそうです。自由学園の「探究」について考える上でも、多くのヒントを与えてくれる一冊だと思います。

  
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