今週の1冊『教養主義の没落』/図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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今週の1冊『教養主義の没落』

2025年9月8日

2025年9月8
『教養主義の没落』竹内洋 中公新書
 だいぶ昔に出版された本なのに、どうしてこんなに話題になっているのだろう?と思っていた一冊です。歌手の米津玄師さんが絶賛されたとのことで一気に読者を増やしたそう。確かに、今読んでも面白い内容なので紹介します。
 著者の竹内さんは教育社会学者で、本書では日本において「教養」という言葉が含んでいた内実がどのように変化してきているか、をデータや資料に基づいて分析しています。旧制高校は1950年まであった学校で、帝国大学への進学のための予備的な教育を行う男子のみ対象の学校でした。ここでは、読書を中心とした教養主義が貫かれており、この文化は戦後1970年代頃までは存在したと著者は分析しています。1942年生まれの竹内さんご自身も、大学時代に様々な本や雑誌を読み、就職活動では面接時に保険会社の社長さんが、著者の卒論(アメリカの社会学者マートンの機能主義)の内容について細かく質問されたそうです。社長も若き日は教養青年だったのだろう、と。
 高等教育(大学教育)を受ける人数が少なかった時代から、「マス高等教育」になっていく1960年代後半、就職先も専門地や教養知をサラリーマンには求めなくなっていき、学生も教養を書籍からだけではなく、さまざまなカルチャーから身に付けるようになります。それを著者は「キョウヨウ」と表現しますが、それは周りと自分との差異に異常に敏感な「過剰な現実適応学生文化」と関係していると言います。だとしたら、この本が出た2003年から20年以上たった今、「教養」とは何を指している言葉なのでしょうか。そんな問いを立てたくなるような1冊。書庫2階に所蔵の本ですが、もしかしたら1階閲覧室にもう一度、下りてくるかも?

  
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