今週の1冊『わたくし96歳#戦争反対』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2025年9月17日
2025年9月16日『わたくし96歳#戦争反対』 森田富美子・森田京子著 講談社この本、途中から読み始めると、90歳を過ぎても元気いっぱいの女性の物語として楽しく読めます。ですが、一番最初から読むと、その後の文章の印象がまったく違うものになるのです。森田富美子さんは1929年生まれ。高等女学校生だった時に長崎に原爆が落とされ、両親と弟3人を亡くします。自分は工場に動員されていて命は助かりましたが、家族がいた家は爆心地からたった200mの場所にありました。妹と2人、生き残った森田さんは、叔母夫妻に育てられ、その後結婚。子どもも生まれ、夫の実家が営んでいた洋品店で化粧品も扱うようになり、充実した毎日を送ります。そして79歳で長崎の家を「家出」(本人談)し、長女が暮らす東京に移住しました(ちなみに共著者の京子さんはこの長女さんです)。Xで「わたくし90歳」のアカウントで発信を始めた森田さん。その原動力は国会中継や政治家の言動を見て、これはいけない、自分の戦争経験を伝えなければ、と思ったことでした。本当は思い返したくもない、辛すぎるという言葉さえも陳腐に感じるくらい、壮絶な経験でしょう。それなのに、その経験を話さなくてはならない、と思わせてしまう今の社会について、考えざるを得なくなる本です。「国会中継を見ていると、戦争をしたがっている顔がそこここに見えます。(中略)戦争は遊びではありません。やりたいなら一人でやってください。(中略)国民は騙されてはいけません。もう巻き添えになってはいけません。」(p236)。まっすぐな言葉が読み手に向かってきます。でも、この方、とってもおちゃめなところもたくさんあって、楽しく読める部分も満載です。ぜひ読んでみてください。
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