今週の1冊『あの日あのとき 古里のアルバム 私たちの浪江町・津島』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2025年10月13日
2025年10月13日『あの日あのとき 古里のアルバム 私たちの浪江町・津島』馬場靖子 東京印書館 2011年3月11日。東日本大震災が起こりました。東京電力福島第一原発では爆発が起こり、膨大な量の放射能が漏れだしました。この本は、この放射能汚染によって帰宅困難地域に指定された浪江町・津島に住んでいた馬場靖子さんが撮影した写真を編んだ写真集です。 表紙をめくると、まず斎藤さんという方の笑顔にくぎ付けになります。なにしろ斎藤さんが撫でている犬も、なんともいい笑顔なのです。避難解除後のワンショットだそう。プロローグは「最後に見た津島の夕暮れ雲」とのタイトルです。プロローグなのに、まるで終わりのような文言なのは、その写真を撮った1週間後に大地震が起きたからです。「まさかこれが最後になるなんて」とは、きっとこの地区に住んでいた誰もの心の叫びだと思います。 高線量の放射能に汚染された自宅に帰れるのは月1度で、そのたびに光景を写真に収めています。眺めながら、思わず涙がでそうになったのは、26頁の文章を読んだときです。とても美しく咲き乱れる春の花たちは、震災の年の5月に撮影されたものです。渡部さんという地域の方のおうちとお庭の写真で、その後、避難されていた渡部さんに渡されたそうです。 原発事故は、その地域に住む人たちの自宅を、仕事を、地域の人とのつながりを奪い、その結果、心身の体調を崩した人たちの命をも奪っていきました。人の命より大切なものってあるのでしょうか。原発は、人の命よりも大切なのでしょうか。読み終えると、こう問い続けざるを得なくなる1冊です。 今、図書館ではこの本と一緒に『百年後を生きる子どもたちへ 「帰れないふるさと」の記憶』(豊田直巳 農文協2020年)、『浜通り 2000~2003福島』(須賀武継 雷鳥社2021年)、また、前回ご紹介した『浪江町赤宇木の記録 百年後の子孫(こども)たちへ』を「今週の1冊展示コーナー」に置いています。いずれも福島の今野邦彦さんからご寄贈いただきました。ぜひお手に取ってご覧ください。
図書館・資料室のご利用 についてはこちら