【社会】『麦の収穫祭』と10次産業,生涯学習/環境文化創造センター - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

【社会】『麦の収穫祭』と10次産業,生涯学習/環境文化創造センター - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

環境文化創造センター

【社会】『麦の収穫祭』と10次産業,生涯学習

2019年10月25日

「麦の収穫祭」とは

2013年に,市民主催で始まった地元産「柳久保小麦」をはじめとする東久留米産麦類の利活用・振興を目的とした『麦の収穫祭』は,当時参加者50人ほどであった[1] [2]が,5年後の今年(2019年10月6日)は,六仙公園を会場とし,出店数84,小雨も降ったが参加者は10時半からの3時間半で約2,500名となった.(2016年より東久留米市後援.毎年行われる環境フェスティバルは,2日間で同規模.)地場産小麦というワンテーマで,市民が始めたイベントということでは画期的なことである.
出店者は,小麦や小麦粉製品の生産者をはじめ様々で,内容も,「柳久保小麦」を使った麺類やパンやお菓子,麦ワラを使ったフィンランド発のヒンメリ細工に,アクセサリー,農産物や苗木など,麦の周辺の広がりも多彩である.今年はお子さん向けの紙芝居も登場した.
このイベントの大きな特色であるが,参加者は小さなお子さんを連れた若い世代から,お年寄りの世代まで,幅広い世代が集うことである.

 

 

 

 

六仙公園とは

都立六仙公園は,雑木林等の武蔵野の原風景を再現し,南沢湧水の涵養地となるようにという環境目的と,災害時等の避難広場となるようにという防災目的を兼ね備えた公園である[3].防災公園であることは,収穫際などを通じてかなり市民の周知するところとなってきたようである.今回も,公園に向かう途中ですれ違った親子連れが,小学校低学年のお子さんに,公園だけれども地震とかいざというときの避難場所になるということを道すがら話していた.防災教育という意味でもよいきっかけとなっている.

 

最高学部生の作ったクッキー

自由学園最高学部は毎年参加しており,今年は卒業研究(フィールドサイエンス・ゼミ)で行っている東久留米産麦類の研究の一貫として,東久留米産の小麦とライ麦の粉を利用したクッキーなどを試作し,来場した方々に試食していただき,アンケートにもご協力いただいた.材料は他に,バター,砂糖,卵だけである.薄い抹茶のようなきれいなライ麦の緑色が出ている.噛んでいると口の中でライ麦特有のねばりも出て,試食して頂いた方々には大変好評であった.

 

10次産業という価値連鎖と生涯学習

出店者には,地元で400年続く農家の若手後継者もいて,育てた果物をジャムやお菓子などにしたものを販売している.農(1次産業),食品加工(2次産業),販売(3次産業)の価値連鎖は,6次産業(農工商連携)といわれるが,観光農園や書店経営,コミュニティ誌の発行,コミュニティスペース経営など4次産業にもつなげていて,6次+4次合わせて10次産業を小規模ながら運営している.防災時の受け入れとしてブルーベリー畑に防災用の井戸も掘っている.
4次産業には,環境や防災,コミュニティビジネスなどのほか,地域保健医療や介護,各種ケアなども入っており,農業との関係では,農福(1次+4次)連携もある.出店者には,社会福祉法人もいて,就労継続支援で作られたジャムなどを販売している.
もうひとつ4次産業に入っているのが,教育である.自由学園が「柳久保小麦」の利活用で取り組んでいるような小さな研究開発も,各産業への人材供給機能と併せて,従来の価値連鎖を超えて行く力となるだろう.
自由学園は「柳久保小麦」などの地産地消ということで,現在,定期的に粉を購入してパンやうどんを作って学園の昼食や寮の食事等に供しているが,さらに料理での色々な使い方を生徒・学生とともに模索し購入量の拡大を目指している.これは地元の農業振興に寄与し,現在高めの柳久保小麦の価格の引き下げ=生産販売量の拡大に寄与するだろう.さらに,成長期の幼児から生徒,学生を預かっている自由学園としては,契約栽培的になる面があるので,東久留米市の環境基本計画にうたわれている「農薬や化学肥料を過剰に使用しない」エコ農業振興をお願いすることにもなろう.麦畑の美しい景観だけではなく,経済と環境がリンクし,水と緑と土の保全につながって行くのである.
『麦の収穫祭』のキャッチコピーは,「「あったらいいな」をみんなでつくる」である.『麦の収穫祭』は,世代を超えて知り合い,お互いに「学び合い」,分野,業種・職種を超えて共創する機会の場,10次産業のインキュベーターの場,「生涯学習」[4]の格好の場でもある.市民が中心の小さな歩幅のベイビー・ステップかもしれないが,東久留米にとって意味のある大きなステップであろう.

 

 図:環境と10次産業
(左上の5つの四角は,東久留米市環境基本計画に対応している.)

 

[1] 4年生が東久留米小麦収穫祭に参加する(2014/10/1自由学園HP)
[2] 麦の収穫祭―東久留米麦まつり―に参加(2018/11/8自由学園HP)
[3] むさしのの都立公園>8公園の紹介>六仙公園:公園の概要(外部ページ)
[4] 生涯学習は,SDGs(2015)の目標4 「すべての人々へ包括的かつ公平な質の高い教育を提供し,生涯学習の機会を促進する(Ensure inclusive and equitable quality education and promote lifelong learning opportunities for all)」にも掲げられている.

国(文部科学省)でも「自立,協働,創造をキーワードとする生涯学習社会の実現」ということが掲げられている.1990年代にマスコミが「ゆとり教育」と名付けたものも「生涯学習体系へ移行」であった.学校の場ばかりがフォーカスされてしまったが,家庭や社会,企業,文化,スポーツ,レクリエーション,ボランティア,趣味など様々な場や機会において行う学習が視野に入っていた.「教育」「学習」には片方向的なニュアンス,「学び合い」には双方向的なニュアンスがある(外部ページ).

 

文・図・写真:杉原弘恭(環境文化創造センター長)

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