【研究】南沢気象観測だより(6・7月の様子)/環境文化創造センター - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

【研究】南沢気象観測だより(6・7月の様子)/環境文化創造センター - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

環境文化創造センター

【研究】南沢気象観測だより(6・7月の様子)

2020年8月22日

環境文化創造センターでは,全学の教育・研究・マネジメントに供することを目的に,高精度の気象観測システムを南沢キャンパスに整備しました.これは株式会社フィールドプロとの「産学連携による共同研究包括協定」に基づくプロジェクトの一環で,2019年10月末に各種観測機器を最高学部棟屋上に設置し,12月より気温,湿度,雨量,風向,風速,気圧の6要素について連続観測を開始しています(2020年7月より日射量が加わり7要素).これらの観測に使用する各種センサーは,全て「気象庁検定」を取得し,管轄の東京管区気象台(気象庁)に設置届出を行なっています.
今年度からは,定期的に気象観測におけるトピックを本サイト上でもお知らせしています.南沢キャンパスの季節の移ろいを身近に感じていただければ幸いです.

 

【2020年6・7月の様子】

6月は,月間の平均気温23.2℃,最低気温17.2℃(1日),最高気温32.8℃(15日),月間の降水量*は280mmでした.最高気温が25℃を超え夏日となった日数は17日,30℃を超える真夏日となった日数は7日を記録しました。6日の夕方は時間雨量59mm,日雨量80mmを記録する激しい雷雨があり,校内各所で雨水が川のように溢れ出しました.関東甲信地方の梅雨入りが発表された11日は,前日10日から梅雨前線の北上に伴い風が強まり,正午過ぎに最大瞬間風速18.3m/秒(風向:南南西)を記録しました(当月最大).月間の平均湿度は76.9%でした.

7月は,月間の平均気温24.0℃,最低気温17.0℃(16日),最高気温33.8℃(20日),月間の降水量*は255mmでした.夏日となった日数は18日,真夏日となった日数は6日を記録しました。梅雨前線の停滞により多雨傾向となり,雨や曇りの日が続きました.0.5mm以上の降雨を観測した日数は29日に及び,月間の平均湿度は85.1%と多湿傾向となりました.このような条件に助けられてか,校内ではキノコ類やコケ類が例年以上に多く見られた印象です.
また岐阜県・長野県が豪雨に見舞われた8日は,朝から午前中にかけて風が強まり,最大瞬間風速19.0m/秒(風向:南南西)を記録しました(当月最大).
南沢キャンパスは多雨多湿な時期を抜け夏本番を迎えています.

 

女子部講堂前のアジサイ(6月23日)
食糧部前のタイサンボク(6月25日)
様々なキノコ類が発生(7月9日)
通行量の少ない園路はコケ類で緑色に(7月24日)

 

データ出典:自由学園水文・気象観測システム
*データは速報値のため今後修正される場合があります
自由学園南沢キャンパス(最高学部棟)屋上露場
北緯35度45分8秒、東経139度32分17秒 標高:約73m(4階建ビル屋上)
*上記数値は目安です

参考:tenki.jp 日本気象協会

*2020年6・7月の雨量データはシステム整備工事により一部欠測のため補正値.欠測期間は同地点設置の予備雨量計並びに,東京都水防災総合情報システムより「東久留米」地点のデータを引用して補完.

 

◼︎ 過去のたより(2020年度〜)は以下よりご覧ください
 南沢気象観測だより(4・5月の様子)

 

【気象観測機器について・第2回:(3)雨量(降水量

自由学園水文・気象観測所に設置されている各種観測機器についてシリーズで詳しく紹介します.第2回は雨量(降水量)を測るセンサーです.
雨量計(センサー)は標準的な「転倒ます型」と呼ばれる大田計器製作所製OW-34-BP(気象庁検定付き)を用いています(写真1).本体は円筒形で上部に口径200mmの漏斗型の受水器があり,これにより降水(降雨と降雪)を取り入れます(寒冷地では降雪を溶かすためのヒーターが内蔵されます).受水器の直下(内部)にはシーソー状の「転倒ます(写真2)」があり,片方のますに一定量の水が溜まると,日本庭園で見られる「鹿威し(ししおどし)」の様に転倒し「カタン」と音が鳴ります.その際パルス信号が出力されるとともに,水は下部から排出されます.本形式では1転倒(信号)が降水量0.5mmに相当し,これが左右交互に繰り返され,その回数を記録装置(データロガー)でカウントすることにより時間あたりの降水量を観測することができます.即ち5mmの雨量が観測された場合,ますが10回転倒したこになります.本形式はシンプルな機構で信頼性が高く,長年に渡り全国各地の自動雨量観測に用いられています.
設置場所は他の機器とは異なり,平屋建ての最高学部理科棟屋根上に設置しています.これは風の影響による観測精度の低下を避けるためで,先代の雨量計を設置した2009年当時の学生による予備調査から得られた,最高学部周辺においては理科棟屋根上が風の影響が小さいという結果を受けたものです.加えて雨量計の周囲には人工芝を配し,硬い屋根面に叩きつけられた雨滴が跳ね返り,受水器に混入することを抑止しています.通常は観測機器と記録装置は有線(ケーブル)で接続されますが,最高学部棟屋上との間に距離があり,配線が難しいことから無線通信方式を採用しました.そのための送受信機が理科棟屋根上と最高学部棟屋上に設置されています.
また雨量計はその特性上,受水器に植物の種子や落葉,粉塵など様々なゴミが溜まるため定期的な清掃と点検が欠かせません.その他転倒ますの正確な動作のために,本体が水平に据え付けられていることも重要です.このような清掃・点検には最高学部の学生も参加しています(写真3).
「雨量」の観測は水防災等の治水面をはじめ,水資源等の利水面,水辺の動植物と生息場の保全等の環境面など,あらゆるスケールの水循環・水環境の把握にとても重要な指標です.現在,最高学部のフィールドサイエンスゼミでは雨量と学園周辺の地下水位の関係に着目した研究が進められています. 
 

(写真1)最高学部理科棟屋根上の設置した転倒ます型雨量計
(写真2)転倒ます型雨量計の内部構造
(写真3)雨量計のメンテナンス風景

 

雨量観測について詳しくはこちら(フールドプロ社コラム)

 

【研究】 高精度の気象観測システムの運用開始と産学連携による共同研究包括協定の締結

 

文・写真:吉川慎平(環境文化創造センター・最高学部)

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